春の選抜高校野球大会が連日盛り上がっていますね。今日4月1日は決勝戦です。3月19日から熱戦が繰り広げられてきました。出場校は各地方枠が28、21世紀枠が4の合計32校です。ここで問題です。
連日テレビ放送がありますが、春の選抜高校野球は全部で何試合かわかりますか?
これ、実は中学入試の算数の入試問題です。答えは32-1=31で31試合です。
1回戦は32÷2=16試合で…と考えたり、ト-ナメント表を書き出して数え上げたりという方もいたかもしれません。
「32-1=31」という式で求めることができます。これは32校のうち、優勝する1校以外の「32校-1校=31校」は必ず1回負けて甲子園を去ります。1試合で1校が敗退していくことになるので、31校が敗退するには31試合が必要だという考え方です。
「試合の数そのものではなく、敗退するチ-ムの数を数えても同じことである」ということがポイントです。
「別のもの」を考えることで簡単になる
算数でよく試される力なのですが、「一見ややこしい対象が、実は別のものを考えることでより簡単に数えられる」ことを理解しておきたいですね。「ビジネス数学」というほど大げさではありませんが、このような算数レベルでも問題解決をよりシンプルにしてくれるのです。
たとえば、「サイコロを3回振って、その積が偶数になるのは何通り?」という問題を考えてみましょう。
「積が偶数」になるには、一回でも偶数(2、4、6)が出ればOKです。というわけで、「1回だけ2か4か6が出る場合、2回出る場合…」と考えると面倒なことになります。
それよりも、「積が奇数になる場合」の方が格段に簡単です。3回すべて奇数(1、3、5)が出なくてはいけないので、「3×3×3=27通り」あります。
サイコロを3回振る組み合わせは全部で「6×6×6=216通り」なので、奇数になる27通り以外の「216-27=189通り」が偶数です。これも「偶数になる場合」を数えるのは、「奇数になる場合」を数えることで圧倒的に楽になるのです。
ビジネスにおいては、「数字を正確に把握する」ことが基本です。そして、数え間違いをなくすには「簡単な方法で数える」ことが大事なのです。複雑に見えるものをそのまま数えるのではなく、「簡単に数えられる方法はないか?」とすこし立ち止まって工夫しましょう。
「指示を受けた人のミスを減らす指示」の出し方
これは、自分だけの問題ではなく、指示を出すときにも重要な考え方です。簡単にできるように工夫をして指示してあげれば、指示された側でミスが減るのです。
AさんとBさんが100m離れたところから向かい合って歩き始めます。
Aさんは秒速3m、Bさんは秒速2mで歩きます。Aさんは犬を連れていて、歩き始めると同時にリ-ドを離します。犬はそこからBさんに会えるまで走っていき、Bさんに会うとすぐにAさんの方に引き返していきます。そして、Aさんのところまで戻ると、再びすぐにBさんの方に向かってかけていきます。2人のことが大好きな犬は2人の間を秒速5mで往復し続けます。
AさんとBさんが出会うまでに犬は何m走るでしょうか?
これも小学生の問題です。下のイラストのように考えると、犬の移動距離を測定するのはすごく複雑そうですね。しかし、移動距離=速さ×移動時間です。よって「移動距離を測定する」ことは、「移動時間を測定する」ことと同じ意味を持つのです。移動距離を捉えるのは難しそうに見えますが、移動時間は簡単です。
これは、2人が出会うまでの時間ですから、「100m÷(3+2)=20秒後」です。よって犬は「5×20=100m」走ることになります。
これも、「移動距離」という難しいものを、「移動時間」という求めやすいものにすり替えることで簡単に求めることができるという一例です。
最後は社会人向け算数・数学講座でもよく取り上げられる例題をご紹介します。
100人にアンケ-トをとりました。
スマホを持っている人は80人、タブレットを持っている人は60人、パソコンを持っている人は90人、どれも持っていない人は2人いました。
パソコンを持たずにスマホ、タブレットで済ませている人は何人いますか?
「パソコンをもたずに」というヒント文を挿入してみました。「スマホ、タブレットで済ませている人は何人いますか?」と質問するよりも答えを出しやすくなります。
パソコンを持っている人が90人なので、「パソコンを持っていない人」は10人です。この10人が、パソコンをもたずに済ませている人です。この中には「何も持っていない2人」が含まれていますね。よって、「10-2=8人」が、「パソコンをもっていないが、何も持っていないわけではない人」で、これが答えになります。
「パソコンを持っている人」という情報から簡単に求められる「パソコンを持っていない人」を考えることがポイントでした。
「算数の姿勢」でミスを減らす
「複雑な作業を複雑なまま丁寧にやる」のは美徳かもしれませんが、ミスの危険が付きまといます。同じ意味・結果を出せる別の簡単な考え方はないかと探る姿勢は算数の基本です。算数・数学が得意な人はめんどくさがりが多いというのは通説です。みなさんもぜひ、「良質なめんどくさがり」になってください。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら