ビジネスにおけるトラブルで時々発生するのは「突然の無茶振りで締め切りが数日後!」という事態である。こんな時「聞いてないよ~」やら「そんなの無理」と言いたくなるが、私のようなフリーランスからすれば、「ありがたや~」という感覚になる。
というのも、「聞いてないよ~」というのは大抵の場合、仕事をしたくない方々の定型句であり、仕事をしたい人間からすれば「そういった人々が避けるのであればむしろ私にとってはチャーンス!」と思えるのである。
今回は「ビジネストラブル」という連載ではあるものの「ビジネストラブルはむしろチャンスである」という話にしてみる。
多くの場合、私のような「野良フリーランス」には、「ちゃんとした人々が仕事を受けてくれなかったです~!」といった時にお仕事のオファーが来る。これぞ私にとっては「大チャーンス!」なのだ。
要するに、本来頼みたかった人が断った場合、「仕事を発注できません!」というトラブルに巻き込まれた方からすれば、私のような「なんでもやります!」という人間はチャンスを得られるのである。
私自身、フリーランスとしてたいして能力はないものの、ありとあらゆるエラソーな方々が仕事を断ってくれるお陰で、「落ち葉拾い」をさせてもらい、それがきっかけでさらなる仕事を貰え、それらの経験が「おいしい仕事」に繋がる。
というわけで、他者が「こんなクソ仕事できるかよ……」と捨てた仕事のオファーが来た場合はガンガン受けるべきである、という提案をしたい。これは会社員だろうがフリーだろうが同じである。結局、仕事をくれる人というのは、お金を握っている人々である。
その金額は個々の皆様によって異なるだろうが、今は握っている額が少なくてもいかもしれないが、将来的にはとんでもない額を動かす可能性がある。そうした時にこの方から選ばれる人材になることが必要なのだ。
だから、エラソーな人間がこの仕事を拒否して、そこで困ってあなたに「〇〇さーん、この仕事、やっていただけませんでしょうか!」とお願いをしてきた場合、多少額は少なくとも居酒屋の「庄や」のごとく「よろこんで!」と受けるべきなのだ。
これまで当連載では「自身のビジネストラブル対処法」について言及してきたが、もう一つ大事なのが「他者のビジネストラブルを私が解決する」という姿勢である。これをすることにより、トラブルに巻き込まれた人が数ヶ月後には「いやぁ~、あの時〇〇さんがこの仕事を受けてくださったお陰でなんとかプロジェクトは進みました!」と感謝してくれる。
さらにその後、「あのプロジェクト、追加予算がつきましたので、〇〇さんにお仕事をお願いしたいです!」となるものである。
結局、ビジネストラブルというものは、回避してくれた人間には窮地を救われた人が感謝し、その後は恩義を基になんらかのリターンをくれるもの。人は「持ちつ持たれつ」なのである。
「火中の栗を拾う」という言葉がある。これは、「痛い目に遭うことが分かっているのに敢えてその茨の道に進む」を意味する。だが、時には敢えて火中の栗を拾った方が商売の上流にいる権力者があなたのことを評価し、「おいしい」仕事をくれる可能性がある。
だからこそ、「ビジネストラブルは実は絶好のメシのタネ」という考えを持った方がいい。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら