CAのここだけの話

CAは見ている 乗り慣れた“プロ”のお客様がとるこなれた行動

山崎愛音

 SankeiBiz読者のみなさんだけにCA(客室乗務員)がこっそり教える「ここだけ」の話。第84回はアジア系航空会社に勤務し、乗務2年目の山崎愛音がお送りいたします。

アジア系航空会社に勤める山崎愛音さん。写真はアメリカのLAで、ヘルシーで見た目もきれいな朝食をとっているところ。提供:本人
アメリカ、LA西部のサンタモニカは海に面した美しい街。夕暮れ時、海に沈む夕日を見ようと沢山の観光客が訪れていました。提供:執筆者
シンガポールにはヨーロッパ式の建物が立ち並ぶおしゃれな街並みもあります。提供:執筆者
シンガポールの巨大な植物園「ガーデンズバイザベイ」の屋内温室「フローラルファンタジー」では名前のとおり幻想的な雰囲気が味わえます。提供:執筆者

 今回は、私たちCAが「このお客様、飛行機に乗り慣れているな」と思う、いわば“飛行機のプロ”ともいえるお客様の行動や傾向をご紹介します。あまり飛行機に乗る機会のない方も、このポイントを抑えておけば機内で快適に過ごせるうえ、CAからの視線も変わるかも? ぜひ参考にしてみてください。

 1. 非常用出口前の座席は確保しない

 飛行機の最前列、また非常用出口前の座席は「足元も広く、快適で良い席なのだろう」と思っている方が多いのではないでしょうか。確かに足元は広いですし、お手洗いに行く際も他のお客様の邪魔にならず、身動きがとりやすいのは良い点ですよね。しかし、この席にはいくつかデメリットがあります。

 まず1つ目は、とても寒いということ。非常用出口付近は他のエリアと比べると冷房の影響を受けやすいため、かなり冷えます。機内ではご要望に応じて温度調節も行っていますが、全ての座席で同じ温度にすることはなかなか難しいのが現状です。

 2つ目は、手荷物を足元に置くことができないため、都度、頭上の物入れから荷物を取り出さなくてはいけない点です。緊急事態に備え、非常用出口は、全ての荷物を上の棚に収納しなくてはいけません。シートポケットもないので、スマートフォンや飲み物などを手の届く範囲に置いておけないのは不便ですよね。

 これらの理由より、乗り慣れているお客様は、あえてこの非常用出口付近は選ばない方が多いです。例えば、弊社ではより静かに過ごしたい方のために、10歳以上のお客様のみがご利用頂けるエリアがあります。よくご存じの方はこういった「ビジネスクラスよりはお手軽、かつ意外とお客様が少ない座席」を利用される傾向があります。

 2. ゴミをシートポケットの中に入れておかない

 お菓子のゴミや紙コップを、シートポケットに入れっぱなしにすることはありませんか?

 LCC(ローコストキャリア)ではお客様の降機後、CAも機内の清掃を手伝います。そのため上空では、FSC(フルサービスキャリア)に比べて、CAがゴミの回収で機内を回ることも多いかと思います。乗り慣れているお客様はLCCの事情をご存知なので、ゴミ回収のカートが回ってきたら、自ら進んで済んだ物を捨ててくれます。または、降機の際にシートポケットに入れるのではなく、座席の上にまとめておいてくださる方が多く大変ありがたいです。

 3. 快適に過ごすためのマイグッズを用意している

 飛行機をよく利用されている方々は、機内での過ごし方を工夫されています。

 特にLCCでは、機内エンターテイメントがなく、アメニティの用意もないことがほとんどです。そのため、ご自身でiPadやPCを持ち込んで好きな映画を観たり、お仕事をされています。また飛行機で休みたい方は、ネックピローはもちろんのこと、ブランケットや目元が暖かくなるアイマスクなどをご自身で用意されています。

 マイボトルを準備されている方もいます。日本の空港ではあまり見かけませんが、海外の空港では、無料の給水器が設置されている所もあるのです! 手荷物検査を終えた後に、マイボトルにお水やお湯を入れて持ち込めば、機内でも十分な水分補給ができ、機内の乾燥による喉の痛みなどを防ぐことができますよ。

 4.CAが話しかけてほしいタイミングを知っている

 CAに聞きたいことがあるけれど、どのタイミングが一番いいか迷う方も多いのではないでしょうか?

 CAにとって、搭乗中・離陸前・サービス中・着陸1時間前はとても忙しいです。特に離陸前は速やかにお客様の搭乗を手伝い、荷物の収納、不審者の有無、非常用設備の説明などを行うため非常に忙しいのです。

 乗り慣れているお客様は、そういった流れを知っているので、サービスが落ち着き、CAがギャレー(機内のキッチン)で休んでいる際を見計らって話しかけて下さいます。もちろん、体調不良や緊急事態はすぐにCAを呼んでください! しかしそれ以外のことであれば機内の照明が暗くなり機内が落ち着いたタイミングで、ぜひギャレーに足を運んでみてください。CAたちもお客様とゆっくりお話しするのを楽しみにしています。

 5. 機内持ち込み手荷物を最大限に有効利用している

 LCCでは、荷物を預ける場合は受託手荷物料金が発生します。せっかく安いチケットで乗るのに、荷物で追加料金がかかってしまうのは何だかもったいないですよね。そのため、乗り慣れている方々は機内持ち込みの手荷物にまとめ、受託手荷物なしで旅行にいかれる方が多いです。航空会社によって異なりますが、「○kgまで」「バッグ○点まで」「○cm×○cmの大きさまで」など機内持ち込み可能な荷物の決まりがあり、この条件を満たす手荷物であれば機内に持ち込むことができます。この範囲内であれば追加料金はかかりません

 乗り慣れているお客様は、事前に航空会社のHPで持ち込み可能なサイズ・重量などを調べ、それに沿ったスーツケースに荷物を入れて搭乗されています。目的地到着後も、預けた荷物をレーンで待つ必要もなく、そのまま税関に向かうことができとてもスムーズです。

 いかがでしたか? 飛行機に乗り慣れているお客様はご自身で様々な工夫をされているようです。コロナが落ち着いた際、また飛行機に乗る機会がありましたら皆さんも実践してみてくださいね。

群馬県出身。立教大学法学部卒業後、金融機関にて総合職勤務の傍ら、群馬県前橋市の観光特使「ローズクイーン』を務める。社会人4年目に、海外で仕事をしてみたい! との思いから現在の航空会社に転職しタイへ移住。現在アジア系航空会社乗務2年目。趣味はラテンダンス、読書、写真、旅行。Instagram:annieyammy YouTubeチャンネル:Annie Yammy

【CAのここだけの話】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら