画面越しで熱意伝えるコツは? 就活オンライン面接で大学側がアドバイス
来春卒業予定の大学生らの採用面接をめぐり、多くの大手企業が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、オンライン面接を導入した。想定外の面接方式に直面した学生の不安に対応するため、各大学のキャリアセンターは通信環境の確認や目線のやり方などのアドバイスを発信。学生らは手探りの就職活動を強いられている一方で、交通費の節約などのメリットも生まれている。(藤井沙織)
顔は明るく
「目線はどこに向ければいいのでしょうか…」。近畿大のキャリアセンターには、就職活動中の学生からこうした質問が寄せられている。
主要企業で選考活動が解禁されたのは今月1日。だが、面接のオンライン化は事前に公表されており、同大キャリアセンターは休校中の4月からオンラインでの相談を受け始めた。
学生の多くが迷うのが目線だ。対面の面接であれば、面接官の目や顔を見ながら話すのが基本だが、画面に映る面接官の顔を見ていると、面接官側からは別の場所を見ているようにも見えてしまう。
面接官の反応を見ながらやり取りするためには対面と同様、面接官の顔を見るべきだとする考えもあるが、同センターは、カメラの方を意識して見るようアドバイス。また面接前に通信環境が安定しているかを確認▽部屋の中で顔が明るく映る場所を探す▽背景の映り込みを少なくする-ことなどを呼び掛けている。
同志社大のキャリアセンターも4月下旬、「WEB面接のポイント講座」と題した動画を学生向けに配信。目線や通信環境のほか、不意に音声が流れてしまわないよう、関係のないソフトやアプリは閉じておくよう注意を促している。
慣れも重要
だが、こうした技術的な対策を講じても、熱意や人柄がきちんと面接官に伝わるのかという不安は残る。
学生向けの模擬面接で面接官役を務めている近畿大キャリアセンターの課長代理、坂野裕一さんによると、「対面の面接に比べると、学生の雰囲気は伝わりづらい」。その分、学生の話の論理性に注意が向くため、「より意識して、分かりやすく簡潔に話すことが重要」とみる。
一方、リクルートキャリア就職みらい研究所所長の増本全さんは「オンラインという同じツール上で比べることにより、面接官は学生の熱意の差を感じているようだ」と話す。
オンラインは対面とは異なるコミュニケーション形態であり、「ツールが変われば当然、手法も変わる」と増本さん。学生側もオンラインで人と話すことに慣れれば不安も減り、コミュニケーションのコツもつかめるとして、「面接の練習だけでなく、友人と話すのにも使ってみては」とアドバイスする。
メリット実感
オンライン面接はメリットもある。遠方の企業の面接にも自宅で臨めるため、1日で複数企業の面接を受けられる上、「移動時間と交通費がかからない」と学生からは肯定的な声も上がる。
大学が企業から人事担当者やOBらを招いて行う企業説明会も様変わりしそうだ。同志社大キャリアセンターは23日から26日まで、32社が参加する説明会をオンラインで開催した。同センターの松田匡弘課長は「オンラインなら企業に移動の時間をとらせないため、海外の企業にも参加してもらえる。OBらにも仕事の合間に参加してもらいやすい」と話し、コロナ禍の収束後もオンラインの企業説明会を継続したいとしている。
就職活動のスケジュール 就活の早期化による学業への影響に配慮し経団連が定めた「採用選考に関する指針」でこれまで、会社説明会は3月1日、面接などの選考活動は6月1日、正式な内定は10月1日の解禁と定められていた。指針は今春に入社した学生の就活を最後に廃止されたが、政府が来年度卒業予定の学生までは指針に沿った採用活動を行うよう、経団連などに要請。その後の新しいルールについては、政府が関係機関と協議する。