日刊SPA!が5月25日に掲載した「社内でアイスを食べる新入社員。上司とのアリナシ論争が意外な方向に…」という記事をめぐり、ネットでは「何がいけない」といった反応が多数見られる。
おやつにアイス?
記事の内容としては、38歳の新入社員研修担当社員(信夫さん・仮名)が、休憩時間にアイスを食べていた新入社員に「おやつにアイスは違うのでは?」と伝えたところ、思いの他恨まれ、法務の部署に通報されてしまった、という話で「モンスター新入社員」の最新事情紹介になっている。
ベテラン社員が「今の若い者にはついていけない…」と嘆く、「近頃の若い者は…」的定番記事だが、この手の記事は「新人類」「ゆとり社員」「さとり世代」などと勝手にオッサンが若者を分類し、「その考え方が分からん!」「時代は変わった!」と悶え苦しむパターンである。
ここに登場する信夫さんは38歳だが、実に老獪である。彼はおやつを食べることは否定していないものの、せめてチョコレートぐらいであるべきでは、と考えているという。私は「別にアイスぐらい、いいだろうよ。妙なニオイをまき散らかすわけでもないし」とネットの反論に同意した。しかし、この記事を読んだ時「そういえばオレも同じだったな…」と苦笑してしまった。
「今年の新人はヘンテコだ」
1997年5月、1カ月の研修期間を経て配属された私は「今年の新人はヘンテコだ」とすぐに言われるようになる。理由はまず「ランチを食べない」ということにある。皆が連れだってランチに行くのだが、私は「1日2食」という生活習慣を崩したくなかった。そのため、先輩社員からのランチの誘いを断ったのだ。
この時も「近頃の新人の考えることは分からん。ランチの時間というのはサラリーマンにとって重要なコミュニケーションの場なのに」という嘆きを周囲の人々が口々に語り合っていたと思う。だが、私は「1日2食」なのである。
恐らくSPA!の記事に登場する新人も「休み時間はアイスを食べる」という学生生活を送っていたのであろう。う~ん、実に可愛げがあるではないか! あのね、オッサンになるとね、歯茎がキーンと痛くなってアイスみたいに冷たいものは食べられなくなるの。今のうちにたくさん食べておいてね♪ なんて今の私は思う。
博報堂の“キャベツ男”
これまでの普通の生活を彼らは維持しただけの話だろう。「社会人たるもの学生気分が抜けてはいかーん!」ということがこの記事の趣旨ではあるものの、「社会人になったから禁酒しろ」「社会人になったからゲームをやめろ」といったことは「学生生活の延長」扱いはされない。
なぜか「おやつ」だけが問題視されたわけだ。確かに職場でアイスをペロペロなめていたりしたら違和感はあるかもしれないが、私はなんと職場で千切りキャベツを作っていたのである。ランチは摂らないうえに、昼休みも取らないのだが、朝10時になると会社の入ったビルの地下1階のスーパーへ行き、アジフライとホウレンソウの胡麻和えとスープ春雨を買う。
これで何をするかといえば、毎日のように「アジフライサンド」を作るのだ。オーブントースターですでに購入している8枚切りの食パン2枚を焼き、机の引き出しの中から取り出したキャベツを給湯室のまな板の上に乗せて千切りキャベツを作るのである。味付けは惣菜コーナーに置いてあるソースを2袋。パンが焼けたら千切りキャベツをパンの上に敷き詰め、アジフライを乗せ、同様に引き出しに入れたスライスチーズを挟んでゴージャスなアジフライサンドを作り、スープ春雨とホウレンソウ胡麻和えとともに食べてブランチとするのだ。
かくして「今年の新人は当初思っていたよりもっとも変人だった」という評判が部署内にすぐに蔓延し、「あいつはランチに行かない」「あいつは引き出しにキャベツを入れている」というポジションを獲得できたのである。
安易に「モンスター」扱いはするな
その後は「あいつはそういうヤツだ。まぁ、仕事は熱心だけどね」的な評価をされて、私のこの非常識な行為は黙認されるようになった。ただし、ある日部署に謎の赤い虫が発生し、「あれは中川の引き出しのキャベツから発生したのではないか!」という疑惑が取りざたされ、引き出しにキャベツを入れることは禁止されたのである。
さすがに衛生的にキャベツはどうかと思うが、「あいつはああいうヤツ」ということをいかに周囲に思わせるかが快適な社会人生活を送るにあたっては重要である。多少変人扱いされたとしても、気にせず「我が道をいく」を皆で貫こうではないか。あと、周囲の人も安易に「モンスター新入社員」扱いはしない方がいいと思う。異物を受け入れられない組織は衰退するぞ。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら