元受付嬢CEOの視線

テレワーク、ぶっちゃけどう思ったか 経営者はモチベーション維持が大変?

橋本真里子

 この2、3カ月は「新型コロナ」というワードを耳にしない日はありませんでした。テレビや新聞・雑誌、そしてwebメディアでも新型コロナウイルスに絡んだニュースや記事ばかりですよね。外出できないだけでもストレスなのに、目にするもの全てが新型コロナ関連だと、そりゃ「コロナ疲れ」もするでしょう。しかも、新型コロナ関連の記事は複雑化している印象で、私たちが知りたい情報を得づらい状況になっているようにも思います。

 本連載ではこれまでも、数回にわたり弊社のテレワーク(リモートワーク)の“実態”をご紹介させていただきました。複雑化する情報に逆行する形で今回はシンプルに、新型コロナをきっかけに急激にニーズが高まったテレワークについて、個人的に感じた「よかったこと・よくなかったこと」を率直にお話ししようと思います。政府は推進しているけど、「ぶっちゃけた話、どうなの!?」という方の声にお応えできたらうれしいです。

 本質が見えた

 新型コロナの影響で働き方が変わり、今まで見えなかった一面が見えたという経験をされた方、多いのではないでしょうか。弊社でもテレワークなど、働き方が変わることで、従業員の仕事の質や姿勢が今までよりも見えやすくなったと思います。これはテレワークを実施してよかった点です。

 テレワークだと、従業員がどんな姿勢や環境で仕事をしているかを見ることはできません。評価する側の経営者としてはアウトプット(結果)を見ることしかできないわけです。シンプルにアウトプットだけを見ればいい、言い換えると注目する範囲が狭まるため管理者にとっては楽といえば楽です。部活や勉強で言うと練習態度や学習態度は見ることができないので、全ては試合や試験の結果だけを見て判断すればいいということです。

 それがいいか悪いかは置いておいて、従業員の全てを監視するというのは現実的に難しいですし、監視したいとも思わないので、評価される側もする側も今までより「より結果を出さなくては」というマインドになります。

 今まではオフィスという同じ空間で仕事をしていたため、「積極的にコミュニケーションをとる」「一生懸命仕事に打ち込んでいる姿を見せる」ということも可能でした。しかしそれができなくなった今、どんな環境でも自己管理し、モチベーションを維持し、能動的に動ける人とそうじゃない人の差が如実に出ています。そしてそれに焦りを感じる人もいれば、そうじゃない人もいる。一言で言うと「その人が仕事に対してどれだけ真剣に向き合っているか」という本質が見えるということです。

 私自身のモチベーション維持が難しくなった

 経営者の皆さんは様々な方法で日頃のモチベーションを維持していると思います。私はその方法の一つに「従業員みんなが頑張って業務に当たってくれている姿や、真剣にサービスを広げようと議論したり悩んだりしてくれている姿を見ること」があります。日々、様々なことが起こる会社経営ですが、テレワーク切り替え以前は、ふと顔をあげると毎日そんな光景が当たり前に広がっていました。それを見るだけで全てが癒されるほど、私のモチベーションになっていたのです。コロナの影響でその光景が見られないのは本当に辛いと言うか、寂しいです。これは私にとってテレワークのよくない点です。

 それはきっと私だけじゃなく、一緒の空間で仕事をしている従業員のみんなもそうなんじゃないかと思います。経営者だけでなく、誰しも仕事で悩んだりつまずいたりすることはあります。そんな時に近くに話を聞いてくれる同僚や、一生懸命頑張っているメンバーを見て、刺激をもらったりしているのではないでしょうか。

 コミュニケーションが簡素になった

 またコミュニケーションという観点でも、テレワークには欠点があると思います。取引先への移動時の雑談やランチタイムのリラックスしたコミュニケーションや、お互いに身につけているものに興味を持ち合ったり、好きなアーティストの話題やそのヘアメイクの話をしたり、お土産を渡しあったり…。どうしてもテレワークではこのようなたわいもないコミュニケーションを生み出すことが難しくなります。テレワークではなかなか、仕事以外でも「喜ぶ顔が見たい」という精神が働かないので、どんどんコミュニケーションが単純化すると同時に、一緒に働く相手を思いやれない傾向になると思います。

 テレワークが原因ではない可能性も

 今回お話しした3点は、実は新型コロナが原因でもなく、テレワークだけが原因でもないと思います。課題の根元は自分たちの中にあり、環境が変わることによって表に出ただけかもしれません。課題の原因が自分たちにあるからこそ、解決できるとも言えます。むしろ自分でしか解決できないのです。ですので、今私自身が「課題だ」と感じていることにも解決方法があると思っています。課題解決に尽力しなくては、「コロナ疲れ」は進む一方です。

 そして最後にもう一つ、私がコロナ疲れしない秘訣をお伝えできればと思います。

 それは「SNS(ソーシャルネットワーク)を見過ぎないこと」です。世の中がネガティブな情報で溢れている今だからこそ、流れてくる情報を受け取るのではなく、自分に必要で確かな情報だけを取りに行くということを改めて意識してみてはいかがでしょうか。

橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にRECEPTIONIST(旧ディライテッド)を設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら