元受付嬢CEOの視線

テレワーク上級者のON/OFF切り替え法 仮想出社やグッズでメリハリ

橋本真里子

 新型コロナウイルスの感染拡大で改めて注目されているのが「テレワーク(リモートワーク)」ですよね。パーソル総研がおこなった調査によると、感染拡大防止策の一環として、正社員の13.2%が在宅勤務を実施しているそうです。驚くべきは、その約半数(47.8%)が、現在の会社で初めての実践ということです。多くの企業で、感染拡大を機に急速にテレワークの導入や実施が進んだことがうかがえます。

 東京オリンピックは1年の延期が発表され、企業にとってはオリンピック開催中のテレワーク準備期間も伸びました。この期間をうまく利用して、より有効なテレワークを模索したいものです。

 しかし、もうすでに「テレワーク疲れ」なんていうワードも耳にします。先ほどの調査でも明らかになったように、今は急にテレワークを強いられ、戸惑う部分もあるでしょう。テレワークには、社員が「サボるリスク」(過去の記事)もありますが、逆に「長時間労働リスク」もあります。在宅勤務の場合、人事評価が成果主義になる傾向があり、「結果を出さなければ」と働きすぎてしまうこと。また自宅だと集中できずにダラダラと働いてしまうことなどがあるようです。

 弊社RECEPTIONISTは2016年の創業時からテレワークを導入しています。システムエンジニアの中には「フルリモートワーク」で働く社員もいます。出社義務のない、テレワークのみで勤務する制度です。私自身ももうテレワーク無くしては仕事ができないほど有効に活用しています。今回は“テレワークの上級者”として、弊社のエンジニアと私から「テレワークに向き合う際のON/OFFのコツ」をお伝えします。

 一歩先?をいく「仮想出社」

 自宅で仕事のスイッチをONにする時の工夫を、弊社内でヒアリングしてみました。

 一番多かったのは、「着替える」「メイクする」「ヘアセットする」「髭を剃る」「顔を洗う」「歯磨きする」という、いわゆる「身支度をきちんとする」というものでした。これはきっと皆さんも思い浮かべると思いますし、実践している方も多いのではないでしょうか。

 しかし、弊社には一歩先を行く男性社員がおりました。彼は、カバンに荷物を詰め、上着を羽織り、いったん玄関を出るそうです。そして、もう一度家に入り直すことで「仮想出社」をしているそうです。ここまでして初めてONになるのだとか。身支度だけではいまいちONとOFFが切り替えられないなと感じている方には試していただきたいです。

 私も同じことを意識しています。休日でも、仕事をする時はちゃんとメイクし、なんならいつもよりも気合を入れて身支度を整えます。自身を車に例え、エンジンをかけながら(身支度をしながら)、走りたい道路(その日の仕事の成果)を決めてアクセルを踏む(動き出す)イメージです。

 「視界」を意識して集中力UP

 環境によってもONモードを演出します。環境は「空間」と「デバイス」の両方で整えるのが良さそうです。

 弊社エンジニアから多く聞かれたのは、「部屋を分ける」「仕事中に娯楽のものが目に入らないようにする」という声。そして「10時から19時はiPhoneのスクリーンタイムを使ってアプリの使用時間を制限し、自分が集中できる音楽を流す」といったデバイスを利用するという声です。

 仕事用に部屋を分けるというのは「一人暮らしでは難しい」などの声もあるかと思いますが、そういう場合は、自分で「この部屋のここは仕事をする空間」と決めるだけでも生産性は上がると思います。

 私の場合、家の中に仕事に集中できる場所があります。その場所の特徴は、視界に窓しか入らないということです。自宅で仕事をする時は、いろんなものが視界に入ってしまうと、「あ、洗濯機を回さなきゃ」「食器を洗わなきゃ」など、やるべきことをふと思い出してしまい、それをやるまで集中できなくなってしまうからです。視界から消すべきものは人それぞれですが、自分の集中を阻害する可能性があるものが視界に入らないことは有効だと思います。

 一方で、自分のテンションが上がるものを視界に入れるのは有効だと思います。弊社の女性社員は自宅で、モニターのそばに好きなフレグランスを揃えているようです。香りを楽しめる上、好みの見た目が集中力を上げてくれるということです。こういった香りや小物での工夫はオフィスだとなかなか実践しづらいので、自宅ならではの楽しみ方かと思います。

 場所を問わないからこそ、外気を浴びて仕事する

 春になり気温が高い日も増えてきました。私はこの季節になるとよく外で作業をします。外気浴をしながら仕事ができるのもテレワークのいいところだと思います。感染拡大の防止が目的なので、今は外でも、その場所選びに慎重になるべきですが、「密」を避けるという観点では有効だと思います。

 毎日会社に出勤していた方が週5日自宅で仕事すると精神的にストレスを感じてしまう可能性があります。一日の中に家を出る時間を組み込んでみるのもON/OFF切り替え法のひとつだと思います。小一時間、桜の木の下で作業できるのも今の季節ならではかもしれません。

 在宅勤務の「落とし穴」解消法

 工夫すれば効率も落とさずに仕事できる在宅勤務ですが、落とし穴ともいうべきデメリットも2つあります。1つ目は「光熱費」。そして2つ目は「運動不足」です。

 まだ暖房が必要な日もあります。日中会社で仕事をしているとあまり意識しませんが、自宅で過ごす時間が増えると電気代がかさみ驚いている人も多いでしょう。そこでおすすめなのが、ランチを自炊することです。感染防止のために外出自粛が続くと夕飯も自然と自宅でとることが増えると思います。その夕飯やその材料をランチに活用することで、コンビニや飲食店への移動の時間とお金の節約になります。

 テレワークは運動不足につながりやすいので、1時間のお昼休憩は、自宅でランチを食べた後、2~30分お散歩するのがおすすめです。少し体を動かすことで午後の生産性をあげられると思います。あまり体を動かすことが好きじゃない方は「食べ過ぎない」というのも生産性を上げるコツかもしれませんね。

 在宅勤務のおすすめグッズ

 私がふだんから愛用しているグッズを2つご紹介します。

 ひとつは、在宅勤務による筋力低下予防にもなる「ラヴィ 内転筋トレーニング内股シリーズ」です。

 実は、受付嬢時代から愛用しています。受付の来客数が落ち着いている時間帯に膝掛けをしながら、これを使って鍛えていました(笑) ちなみに胸筋を鍛えることもできるので休憩時にも有効です。

 もうひとつは「ドクターエア 3Dマッサージロール」です。

 バッテリー搭載のマッサージ器具で、足の裏や腰などいろんな部分に使えて便利です。仕事をしながらも利用できますし、少し眠気が出たときのリフレッシュにもおすすめです。

 非日常性も活かしつつ、無理はしない

 大切なのは続けられるテレワークの環境を自分なりに構築することだと思います。それには「テレワークだからといってこれをしてはいけない」をあえて決めないことが大切かもしれません。眠くなったら寝る、体を動かしたくなったら散歩に行くなど、自分の欲求を制限することは生産性を下げ、成果達成に向けて逆に遠回りになるようです。

 そして発想の転換も有効だと思います。子どもの保育園や幼稚園への送り迎えがある方いませんか? 例えば、弊社のエンジニアは朝夕、それを「通勤」と捉えてみることで気分転換につなげているようです。私は集中力が切れた時は普段歩かない道をあえて歩いてみたりします。そうすると新しいお店や近道を発見したり…という「意外な発見」も楽しめます。

 今回の記事を機にエンジニアにヒアリングした結果、テレビ会議による開発会議には今度ネコが参加することになったそうです(笑)

 こういった「スペシャルゲスト」を楽しめるのも在宅勤務ならではと思うと、経営者としてとても微笑ましい気持ちになりました。

橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にRECEPTIONIST(旧ディライテッド)を設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら