【元受付嬢CEOの視線】話上手はモテ上手? BOTにならず「コスト」も下がる話し方
会社を経営し始めて、月に数本ほど取材のご依頼をいただくようになりました。月に数回、イベントなどでの登壇もあります。そのため、起業してから4年以上経った今でも、話し方の訓練は日常的に行なっております。「話し方」というのは向き合えば向き合うほど、奥の深さに気付かされます。
皆さんは人前で話すのは得意でしょうか? 多くの人が「得意」とは答えないと思います。「どちらかというと苦手…」という方が大半ではないでしょうか。私は、受付嬢時代も含めて、これまでのキャリアを歩むあいだ、ビジネスの様々な場面での話し方を経験し工夫するようにしてきました。今回はその中で気づいた、少し工夫するだけで「伝わる」「心を掴む」、そしてプライベートでも「モテる」!? 話し方のポイントをお伝えできればと思います。
時間制限を守るだけで印象アップ
本連載では以前、「自分をプレゼン上級者に見せる方法」として、プレゼンの際の文章はなるべく短くしましょうとお話ししました。相手に伝える情報量が少なければ少ないほど、またシンプルであればあるほど記憶に残りやすいからです。今回はそれとは別の効果をお伝えしたいと思います。
歓迎会や送別会、または研修や式典などでショートスピーチなどを求められるシーンがありますよね。その際、多くの人が、与えられた時間よりも長く話してしまう傾向にあります。例えば、研修などで「1人30秒で自己紹介と簡単な挨拶をして下さい」と振られたとします。多くの人は1分くらい話してしまうのです。
その理由は大きく2つあります。
・慣れていないため時間感覚が分からない
・伝えたいことがまとまらず、ぐだぐだと話す
こういう時に意識して欲しいのが、話す内容を研ぎ澄ませるよりも「30秒」という与えられた時間内に収めようとすることです。
自己紹介をしたところで、10人もいたら、実際にはそのスピーチだけでそれぞれの名前なんて覚えられません。それどころか「ぐだぐだと話が長い人だったな…」という印象を持たれてしまいます。それよりも、伝える情報に気を使うよりも時間内でシンプルに伝えて「ハキハキと、すっきりした自己紹介をした人だ!」という印象を与たくありませんか?
「時間内」を意識すると、日常の会話にも生きてきます。ついぐだぐだと情報を並べて話しがちな習慣自体も変えることができ、伝えたいことをスムーズに伝える話し方ができるようになります。
例え話をするだけでなく、「〇〇」を小さくする
ビジネス上のコミュニケーションにおいて、様々な情報を正しく伝えることは非常に重要です。その際に、相手にイメージさせながら話を展開したいシーンもありますよね。
例えば、採用面接時は、求職者と採用担当者がそれぞれ、その会社で「働いている様子」「働いてもらっている様子」などをイメージしながら話をすると思います。そこでお互いのイメージが近ければ近いほど「コミュニケーション・コスト」を抑えることにつながります。コミュニケーション・コストはいわば「意思疎通にかかる時間」。それを削減し認識を早く共有したい時に意識してもらいたいのがこれです。
「主語を小さくすること」
主語のカテゴリをできるだけ小さくするのです。小さくするだけでなく、より具体的で身近なものにできるともっといいでしょう。
例えば、転職先の会社を選ぶ際に「ホワイト企業」や「働きがいがある会社」といった認定を受けている会社に興味を持つとします。しかし実際には「ホワイト」や「働きがい」といったイメージは漠然としていて、具体的に何を理由に認定を受けているのかは面接で知りたいはずです。そういう時に、採用担当者が「うちの会社はみんなが生き生き働いていて、福利厚生もよくて…」なんて話をしても、求職者本人が面接で知りたい情報ではありませんし、会社によってはHPやインターネット検索で知ることができる情報です。この場合、食い違いが生じる原因のひとつは、主語が大きいことです。採用担当者の話し方に問題があります。
そこで、採用担当者の話の主語を小さくしてみましょう。「同じ部署で働くトップパフォーマーの○○というスタッフは、仕事に前向きで面倒見もよく、自ら早朝の時間を後輩たちのために使っているんですよ。会議室を解放し、寺子屋のように、毎朝自分の部下以外も参加できる開けた勉強会を開催しているんです。そこには毎朝、会議室に入り切らないほどの若手が来ていて…」と話せば、求職者は、その会社の日々の様子や自分が働くかもしれない部署や人々の人柄にまで想像を膨らませることができます。そこに「会社としても、こういった活動は積極的に応援していこうということで、朝食の補助などを検討して、それが先週から実施されたところです」と付け加えると、調べればわかる情報や与えられている認定マークの厚みや信頼度がぐっと増すと思います。
日本人は何か質問された時に漠然とした内容で答えがちです。伝えることをリスクだと考えず、身近なことでいいので具体的なイメージにつながる話し方を意識してみて下さい。相手の食いつき方やリアクションも変わってきます。
自分の意思を乗せる
これも日本人に多いと言われているのですが、「~と思います」「~だそうです」「~と感じます」といった、断定を避けるような表現を語尾に用いてしまう癖をもつ人がいます。日本人は周囲の空気を読むのが得意で、それゆえに断定を避けて抽象的な表現を多用するようです。その上、話す時に表情筋の1割も使ってないとも言われています。これらを併せて、極端にいうと「無表情で抽象的な話をしている」ということになります。これでは自分が伝えたいことがほとんど伝わない、または誤解を招きかねません。
相手にスムーズに情報や感情を伝えるには、言い切るような語尾ではっきり、表情をつけて伝えることが有効です。経営者である私が、社員に戦略の説明をするときに、無表情で、「○○らしいです」「△△したいそうです」と推定や伝聞のような語尾を使ったら、全く伝わらないどころか不安を覚えさせてしまうと思います。会話の中の情報を意識しすぎて語尾にはなかなか注意がいかないことが多いですが、語尾を変えるだけでも話し方は変えられますし、印象も変えられます。
BOTにならない話し方
このように見てくると、話し方のスキル向上に難しい技術はあまり必要ないことがわかります。着眼点やニュアンスを変えるだけ、といった小さな改善で印象は大きく変えられるということです。
最後に私が意識していることを一つお伝えします。「BOT(ロボット)にならない」ということです。何を聞いても話しても毎回同じ返答、抑揚もない。そんな話し方では伝わりませんし、相手からも親近感を抱いて話を聞いてもらえません。
思っている以上に話し方というのは人となりを表しています。私は毎回相手の意見や感情を受け止め、それを後ろ向きに返すのではなく前向きに返すようにしています。それだけでも「物腰が柔らかい」「優しい」「ポジティブ」と言っていただくことが増えました。これはプライベートでも非常に有効で、話し方が上手い人はモテの傾向にあると思います。話し方のテクニックやスタンスを少し意識するだけで、2020年はもっと円滑なコミュニケーションを手に入れられるでしょう!
【プロフィール】橋本真里子(はしもと・まりこ)
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。
【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら
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