受付嬢時代に非常に鍛えられたスキルは「人を見る目」です。前回は、約4年間にわたり経営者を続けてこられた理由を他者の評価を通じて分析してみましたが、この「人を見る目」も経営者としての自分を支えているポイントといえます。
会社も組織もチームも「人」で構成されています。どんな人で構成するかは企業の成長や生命力を大きく左右すると実感しています。きっと読者の皆さんも、面接や面談で相手の人柄やスキルを見極め、一緒に仕事をするか否か決めることがあるのではないでしょうか。そこで今回は、シーンごとに、私が相手のどの部分に注目しているかをお話ししたいと思います。あくまで主観的な分析ですが、「自信のない人」にみられる傾向をお伝えします。
初対面で目に飛び込んでくる“過剰な”アクセサリー
女性も男性もアクセサリーを着用するのは自由です。しかし、ビジネスシーンにおいて“過剰な”アクセサリーは特に相手に与える印象を左右するかもしれません。
皆さん、アクセサリーを着用する意味を考えたことはありますか?
- おしゃれとして楽しみたい
- 好きなブランドのものを身に着けてモチベーションを上げたい
よくあるものとしてこうした理由が考えられます。
実は受付嬢においては「結婚指輪以外のアクセサリー着用は認めない」というルールを設けている企業があります。これは、アクセサリーが個性を主張しすぎる可能性があるためだと思います。裏返せば、「個性を出したい」もアクセサリーをつける理由のひとつなのです。
一方で、男性の“過剰な”アクセサリーには暗に、これらとは別の意味があるように感じることがあります。
- 自分自身への注目をそらす
私が思う“過剰な”アクセサリーとは、大きな指輪をすることや、複数の指に指輪をすることです。おしゃれや個性の裏側で、「自信がないから」あるいは「イケてる感を出したいから」、あえて目をひくような指輪をして自分そのものへの注意をそらしているように感じるのです。
私だけでなく、周囲の反応からも、男性でアクササリーを過剰につける人はあまりいい印象を持たれていないことが多いようでしたし、仕事面においても、ちょっと不安を感じている人に多かった印象です。
私が受付に座っていた時に、とある男性社員がこんな話をしに来ました。
「アクセサリーが好きなのはいいんだけどさ、気になっちゃうんだよねー。それに、俺以上に本人が気になってるみたいなんだよねー」
商談相手の男性が、癖なのか、話しながらも、自分がつけている指輪を触っているのが気になるという話でした。その時は「確かに」と思ったくらいでしたが、起業して、受付嬢時代よりももう一歩踏み込んで人と関わるようになった時にさらに共感しました。特に名刺交換時に、相手の名前よりも指輪に目が行ってしまうことがあります。
「仕事はその人の装着品でするものではなくその人自身でするもの。だから、仕事中において過剰なアクセサリーを着けている人は、何か共通する理由があるのかもしれない」。自分なりにそのような仮説を立てて分析してきた結果、「より自分にフォーカスして欲しいと考える人はアクセサリーを身につけない傾向に、自分に自信がない人ほどアクセサリーに執着する傾向がある」と感じました。一様に当てはまるわけではないですが、私は初対面の男性で“過剰な”アクセサリーを身に着けている人には注目してしまいます。
実力がみえてきたときのマウンティング
会社に勤めていると、上下関係なく新しい仲間が入社してきます。最初はお互い様子を見ながらコミュニケーションをとりますが、お互いの実力が見えてくると人によって差が出てくるようです。自信がある人は当初と変わらず、丁寧に接する態度をとる傾向にあります。しかし「自分よりも相手の実力が上かもしれない」または「社内での貢献度が足りないかも」と感じる人はそれを隠すために、態度に変化が出る傾向があります。ビジネス上全く意味のない「マウンティング」をして自分の優位性を示そうとするのです。
自信があればあるほど相手を受け入れようとする態度をとることができます。一方、自信がない人ほど「自分の陣地に入れない」「ポジション取りをしようとする」と感じます。これは結果的にその人自身の評価を下げることにつながりやすいと思います。受付嬢時代からそのようなシーンに遭遇していたので、「自分はそうならないように気をつけなければいけない」と思っていました。そして、そのようにマウントを取ろうと人がいたら、齟齬が生まれないように丁寧なコミュニケーションを心がけるようにしています。
ロジカルではない“ロジカル風”発言
私の周りにいる「自信がある人」を考察した結果、「自信のある人」「ない人」それぞれに見出した傾向があります。
本当に自信がある人は、「知らないことは知らない」とはっきり言いますし、その次に必ず「教えて」「なんで?」という発言が続きます。自信がある人は素直にそうやって言えるから知識が増え、それが自然と自信につながっていくというサイクルができているのだと思います。一方、自信がない人ほど「知らないことを悟られまい」と知ったかぶりをしてしまう傾向があるように感じます。
自信のない人はその延長として、仕事上でも“自信がある風”や“知識がある風”に装いがちで、そのために“ロジカル風”な発言をするのです。しかしロジックというのは、ちゃんとそのロジックの根本を理解していていない限り、一つでも突っ込まれると説明ができなくなるという事態に陥ります。ただの“ロジカル風”では結果的に自分が恥をかくという裏目に出てしまうことになるので、本当にロジックを理解して発言しているのか否かを常に注目するようにしています。
すべての物事を“ロジカル風”に言えば説得力をもつと思うのは間違いです。私も、ロジカルに説明するほうが効果的な場合と、シンプルに説明したほうが伝わる場合とで使い分ける意識をしています。
堂々と振る舞うこと≠自信満々に接すること
私が日頃意識しているのが、「堂々と振る舞うこと」と「自信満々に接すること」は違うということです。経営者という立場柄、自信を演出する必要がある場合も自信をアピールすることより、堂々とすることを意識しています。言葉で表現すると微細なニュアンスのように思えますが、相手に与える印象は大きく違ってくると思います。商談の最中に自信のなさそうな態度でいられると「この人に発注して大丈夫だろうか!?」と不安にさせてしまい、商談がうまくいかなくなってしまいますが、逆も同じで「根拠がみえない自信」も不安になります。堂々、そして素直さと謙虚さ。これがビジネス上のコミュニケーションを円滑に進めるポイントのように思います。
【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら