CAのここだけの話

衝撃を受けたイスラム教国家 日本との違いに最も驚いた2カ国

川上涼子

 SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第58回は東南アジア系航空会社勤務3年目の川上涼子がお送りいたします。

東南アジア系航空会社に勤務する川上涼子さん(左)イラン滞在中にイラン人の乗務員と一緒に撮影。(本人提供)
サウジアラビアの街。洋服などが露店で売られていました(本人提供)
サウジアラビアは“砂の色”をした建物が多かったです(本人提供)
イランの街。道路沿いにモスクを見つけました(本人提供)
イランでは、ミシンのお店を多くみかけました(本人提供)
金物店らしきお店には素材や形もさまざまなやかんが売られていました(本人提供)

 私はこれまで仕事やプライベートでいくつかのイスラム教国家を訪れました。今回は、その中でも、日本との違いに最も驚いた2つの国、サウジアラビアとイランをご紹介します。

戒律を厳格に守るサウジアラビア

 イスラム教国家では、女性は外出時に髪や肌を隠します。国によって程度の差がありますが、私が訪れたことのあるイスラム教国家の中ではサウジアラビアがもっとも戒律が厳しいと思います。

非ムスリムも“水泳帽”で完全カバー

 サウジアラビアでは、非ムスリムの私も、現地の女性と同じ格好をしなければホテルの部屋から出られないと聞いていました。そのため、渡航前に、私が在住しているマレーシアで布の帽子と全身を覆うムスリム向けの服を事前に購入しました。

 ところが、事前準備してはいたものの、現地到着日の翌朝、ホテルの朝食会場へ行く際にさっそく驚かされました。サウジアラビアの女性はホテル内で朝食を済ませるためだけであっても、わざわざ髪を結び、“水泳帽”を被り、その上からヒジャブを被り、服の上にも全身を覆う布を着るのです。

 私がマレーシアで購入した全身を覆う布には髪を隠すヒジャブも付属していました。サウジアラビアでも髪を結んでそれを被れば良いと思っていましたが、サウジアラビアでは、そのヒジャブの下にさらに帽子を被らなくてはならないのです。その帽子はまるで水泳帽のようにタイトな作り。タイトなのは髪の毛の露出を完全に防ぐためのようです。

 このように、サウジアラビアでは、非ムスリムであっても完全に肌と髪の毛の露出を控えなければなりません。慣れてしまえば億劫に感じないのかもしれませんが、外出の度にそうした身支度をするサウジアラビアの女性たちには尊敬の念を覚えます。

ビジネスも一旦お休み

 イスラム教では1日5回、お祈りの時間があります。サウジアラビアではその度に仕事を中断するため、商店なども一旦閉店します。礼拝の時間がくると、街中に「アザーン」と呼ばれるお祈りの時間を知らせる呼びかけが鳴り響き、しばらくの間すべてのお店が閉まっていました。

イランで初めてのモスク体験

 サウジアラビアと同様にイランもイスラム教国家ですが、イランの場合はサウジアラビアよりも戒律は緩いです。イランでは思いがけず、礼拝中のモスクを訪れることもできました。

ヒジャブってかっこいい

 イランでも、女性は外出時に髪や肌を隠しますが、頭にヒジャブを掛けていれば良く、髪は結わず見えていても大丈夫でした。後頭部にだけ掛けている人も多く、「ヒジャブは形だけ」といった様子です。ヒジャブといってもスカーフのような布をかなりゆったりと巻いている程度で、首も見えて構いません。全身を覆う布も被る必要はなく、上下が長袖で肌が隠れていれば良いようです。つまりイランでの私の格好は「普通の服装+頭にスカーフを掛けるだけ」だったのです。

 そういった点で、イランは、私が訪れたイスラム教国家の中でも女性たちが比較的、思い思いのファッションを楽しめているという印象を受けました。イランでは、鼻が高く、彫りが深く、はっきりとした顔立ちの美しい女性をよく見かけました。そのためか、そうした綺麗な女性がおしゃれのためにスカーフを巻いているようにも見え、ムスリムファッションであるヒジャブも、かっこよく感じました。

大勢の人に圧倒された礼拝

 イランの街を歩いていると、モスクがありました。気になり中を覗くと、暗闇の中で多くの人がお祈りをしているのがわかりました。

 頭に布はかけていましたが外見も日本人でムスリムらしくない私は追い返されてしまうかと思いましたが、受付の人が中に入れてくれました。

 靴を脱ぎ奥へ進むと、天井も高く広い暗闇の空間に、100人ほどの女性や子供がびっしり並びお祈りしていました。その空間の中央には高いやぐらのようなものが建っていました。初めて見る光景に、自分はどこに迷い込んでしまったのだろうと少し不安な気持ちにもなりました。それまでムスリム文化に馴染みのなかった私にとっては、体験したことのない雰囲気と空間だったのです。

 足の踏み場もないほどに人で溢れた暗闇空間。そのうちの一人がマイクで何かを大声で唱え、みんながそれに倣い大声で返します。一定のリズムで左胸を拳で叩いていました。そのときはモスク内に女性と子供しかいなかったことが不思議でしたが、後で、イランのモスクは男女別だと知りました。

 壁沿いにパイプ椅子が並んでいましたが、ほとんどの人は床に座っていました。私が外国人で初めて入ったと気付いたのか、近くの人たちが私に椅子を進めてくださったり親切にして下さいました。

 マイクで唱える人に全員が倣い応えるということを長時間繰り返していたのですが、次第に声が大きくなりヒートアップしたかと思えば、顔も布で覆い隠した10人ほどの女性や子供が入口から入って来て、座って叫びながら祈っている大勢の群集の中を練り歩いて行きました。群集はその10人を祀り上げているようで、その10人にとっての何かお祝い事なのかなと感じました。

 私は礼拝所の隅に座り、そうした光景をずっと見ながら人々の熱心さに圧倒され、また、イランの主婦たちは日中にこういう場所へ来て長時間お祈りをするのが習慣なのだろうか…と日本との違いに驚いていました。

ムスリムの目に映る日本って…

 ほかにも、サウジアラビアやイランではたくさんの発見がありましたが、書ききれないので今回はここまでにします。中東の国々、またイスラム諸国は日本とは文化や習慣が大きく異なるためいろいろな意味で衝撃を受けました。

 しかし立場を逆転させてみると、ムスリムの目には、日本人がお正月に初詣に行き長蛇の列をなす光景や、仏壇が家の中にあり蝋燭を灯し小さな鉄のお椀を小さな棒で叩き音を鳴らし、手を合わせる姿も最初は不思議に映るかもしれませんね。

 私は、ムスリムの人々は信仰心が強く、みなが熱心な信者だという印象を受けましたが、ムスリムからすれば日本人もまた熱心な仏教徒だと感じるのかもしれません。きっとお互いに小さな頃からの習慣で当たり前のことなので、宗教を意識した上での行動ではないのかもしれないとも思います。

 日本とは大きく異なる文化を持つ国々をまた訪れる機会があることを願っています。

日系航空会社で5年間乗務後に外資系航空会社に転職し、現在乗務3年目。マレーシア在住。

【CAのここだけの話♪】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら


AirSolはPR、商品開発、通訳、現地リサーチ、ライター業務等、現役CAの特性を活かせるお仕事を副業としてご紹介しています。