【ビジネストラブル撃退道】仕事に穴を空けるのが辛い… 「病欠」せざるを得ない時の対処法
ビジネス上のトラブルで避けられないのが「病気」である。最近は、お笑いタレントかつ、サラリーマンかつ、政治関連の出張授業などを行う「笑下村塾」を運営するたかまつななさんが、盲腸で入院。一度退院したものの再入院となり、大好きな仕事ができない辛さをブログで書いていた。6月21日には「1日も早く働きたい。社会の役に立ちたい。仕事は私の生きがいです」と残念な気持ちを表している。
ここまで残念な気持ちに多くの人はならないかもしれないだろうが、病気をし、仕事に穴を空けるのは自分にとっても関係者にとっても辛いこと。だったらここでは、病欠せざるを得ない場合の対処法と、あとはそもそも病気にならないにはどうするか、を考えてみたい。
早く休んで完治を
病気になった場合は、「仕事を休む」というのが最適解だろう。体に不調がある場合は普段ほどのパフォーマンスは出せないばかりか、病状が悪化してしまうケースも想定される。特に冬の時期など、風邪やインフルエンザをうつされる恐れもあるため、さっさと休んでしまうに限る。そのための有給休暇である。
とはいっても、今回のテーマ「病気」について、さすがに「盲腸」や「痔瘻」「急性心筋梗塞」など入院を要するものはもはや「仕事を休む」ことへの逡巡はないし、周囲も「そりゃ入院しなくちゃまずいな」と理解してくれる。よって、ここでは休むか休まないかの判断が難しい「風邪」ということにしておこう。
コンビニや飲食店のバイトなど、シフトが決まっている場合であっても、オーナーや上司が代理を見つけられる手立てを持っていることが重要で、一兵卒がとにかくやるべきは、ゆっくり休んで早く完治させることだ。そうすれば同僚や客にうつすこともなくなる。
昭和の漫画を見ると、重篤な風邪を引いた夫が顔を真っ赤にし、ゴホゴホと咳き込みながらも、背広を着て家を出ようとするシーンが時々あった。妻は「あなた、そんな体調なのだから今日はお休みになれば?」と言うが、夫は「オレがいなくては現場が回らないんだ」や「オレにしかできないことがあるんだ。休むわけにはいかない」と言う。
「オレにしかできないこと」については、冒頭のたかまつさんなど、まさにそうである。「出張授業」は彼女にしかできないものであり、ブログでもその仕事は穴が開いてしまったと書いていた。しかし、多くの人は楽しみにしていたものの、「入院しているのならば仕方がない」と思い、またの機会を用意してくれるのではないだろうか。
そして、自分自身、編集者の仕事を続けているが、正直「オレにしかできないこと」なんてものはないと思っている。日々の業務では、必ず同僚というか、仕事仲間がおり、自分が来られない場合はその人達の負荷は増えるものの、「お願いします…」と言うことができる。
小学館のNEWSポストセブンというニュースサイトの編集にこの9年間携わっているが、この間、仕事を休んだことは1回しかない。週に2回小学館に行き、編集・入稿作業をするのだが、この唯一の休みの時もそれ程の問題を生じさせることなく乗り切ることができた。
猛烈に体調が悪かったので近くの総合病院に朝行ったところ「インフルエンザのようなものです」と言われた。「ようなもの」って何だ? 陰性なの? 陽性なの? どっちなのさ、と思うような診断である。その病院はヤブ医者として有名で、足の裏にガラス片が入った、と訴えたらなぜかCTスキャンを取ったり、死の可能性がある「急性扁桃膿瘍」であるにもかかわらず、「風邪ですね」と風邪薬を処方したりする。まったく治らないため、耳鼻咽喉の専門医に行ったところ医師は私の喉を見るなり「うわっ! こりゃヒドい。アンタ、今日病院来なかったら死んでたよ」と言われるほどの重症になっていた。
信頼感の醸成が重要
それはさておき、「インフルエンザのようなもの」であれば、周囲にうつす恐れもあるため、私はその日は休むことにした。この仕事は以下のような体制で運営している。
水曜日:私+ライター・A氏
金曜日:私+ライター・B氏
この時は金曜日だったが、病院の帰り、すぐにB氏に電話をし、「インフルエンザかもしれないので、今日は代わりに行ってもらえますでしょうか」とお願いした。するとB氏は「大丈夫ですよ! お大事に!」と言い、代打を受けてくれた。
A氏とB氏は自分が行かない日であっても、急な代打を頼まれた場合は来られるよう、スケジュールを組んでくれている。そして、代打を頼まれたら快く受けてくれる。一度、B氏が病気になった時は、A氏が金曜日に来てくれることになった。こんなチームを作るとともに、普段からの仕事っぷりで「あの人は仮病は使わない人」と思ってもらえる信頼感の醸成が重要となる。
すると、病気から身を守る最大の防衛策は、「同僚に手伝ってもらえる人徳を持っている」ということになる。その代わり、別の人が病気になった時は進んでその人の仕事をする「お互い様」の精神を持つ必要があるだろう。
不思議なことなのだが、毎日の入稿があるネットニュースの編集者になってから13年だが、この間、毎年恒例行事のごとく発生する“喉の痛み”以外で病気になったのは前出の「インフルエンザのようなもの」の時の1回しかない。
職場のルール整備と自己防衛策
「病は気から」という言葉があるが、実はこれって本当なのかな、と今は思っている。最大の予防方法は、「イザとなったら代打はいるけど、できれば代打を頼まない方がいいな。絶対に風邪をひきたくないな」と思う気持ちなのでは、と思い始めた。いや、モーレツサラリーマン・社畜的根性論なのは分かっている。
だが、周囲のフリーランスと話をしても、「オレも“自分商店”的な仕事をしていますが、会社員時代よりも病気をしなくなりました」という話を聞く。よっぽど高齢で持病もない場合は、「病は気から」はある程度は事実なのではなかろうか。
それと、「風邪」の予防だが、まずは職場で「風邪をひいたら絶対に休め」というルールを作るとともに、自己防衛策としては「満員電車を避ける」というやり方でかなり回避できる。満員電車に乗った場合、身動きが取れないから隣にゲホゲホと咳をする人間がいたら逃げることができない。「そんなことを言っても定時に間に合わないじゃないか!」という反論があるかもしれないが、「だったら1時間早く行けばいい」と思うのである。そのうえで、1時間早く帰らせてもらうような交渉を職場としても良いのではないだろうか。
【プロフィール】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら
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