変わる就活最前線 「服装自由」も学生からは「スーツが無難」の声
これまでリクルートスーツが“常識”だった大学生の就職活動で、説明会などの服装を「私服」と指定したり、「自由」とするケースが目立っている。学生の個性を図ったり、暑さ対策や購入費用の負担軽減といった狙いがあるとみられるが、学生側には“減点”を恐れて「無難にスーツ」という意識も依然根強い。専門家は「企業に合わせて判断を」と指摘する。
今年3月、幕張メッセ(千葉県美浜区)で開催された合同企業説明会。事前に「私服・はき慣れた靴でご来場ください」という事前案内にもかかわらず、参加した学生のほとんどがスーツ姿だった。
学生に理由を聞くと、口をそろえたのが「スーツが無難だと思ったから」。黒のリクルートスーツに身を包んだ中央大の男子学生(21)は、「カジュアルな格好が良さそうなところの個別説明会では、そういう格好で行くつもり。会社が求めるニーズに合わせた服装をしたい」。数少ない私服姿だった法政大学の男子学生(22)も、「まだ(スーツを)持っておらず、今日は私服で来たが今後の面接は『私服可』でもスーツで行くと思う」と話した。
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そもそもなぜ、リクルートスーツを着るようになったのか。ある人材コンサルタント会社の担当者は「日本では終身雇用を前提に、『企業に入ってから育てる』という方針だった。能力より人物重視の採用で、服装などで先入観を持たれるのは損と考え、画一化されたのでは」と分析する。
ただ現在は、能力重視の「即戦力」を積極採用する企業も増えており、服装への考え方も変化している。
自社の説明会は「私服」と指定しているアパレル企業の担当者は「スーツでは(応募者が)店舗で働いているイメージがわかない」と理由を明かす。ある広告代理店は、選考によって「自由」と「私服」を分けている。担当者は「私服を指定するのはグループディスカッションのときに動きやすいから。スーツでも問題はないが、『ほかの選考を受けてきたのかな』と思う」と、打ち明けた。
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人材コンサルタント会社「リクルートキャリア」が昨年8月、企業の人事担当者500人に行ったアンケートでは、「服装自由」「私服」と指定したことはあるかという質問に対し、いずれかに「ある」と回答したのは40.8%。「服装自由」の理由については「特に意図はなし」が70.8%で、スーツ代出費などの「負担を考えて」が15.2%、「選考時の評価項目に服装を入れている」は10.5%だった。
ただ、「服装自由」の場合はどんな服装で来てほしいか(複数回答可)との質問については「オフィスカジュアル」が55.6%と最多。2位は「スーツ」で42.7%となっている。
就活支援サービス「キャリタス就活」を運営する「ディスコ」の就活コンサルタント、渡部寛隆氏は、学生に「説明会や先輩社員の服装を見て考えて」とアドバイスしているという。「社員がスーツの企業に学生がカジュアルではおかしい。服装自由であれば、いわゆるオフィスカジュアルでも問題はないが、企業に合わせて服装を考える必要がある」と指摘している。
就職活動の場で私服を指定された場合に適切な服装とされる「オフィスカジュアル」とは、どのようなものか。スーツなどを販売する「洋服の青山」の担当者は、「不快感を与えないことを前提に、『相手に自分をどうに見せたいのか』を元に考えていくべき」と話す。
具体的には、男性はジャケットの着用が基本。パンツはジャケットとそろえてもいいが、「色を変えると、よりカジュアルさが出る」(担当者)。色も濃紺やグレーなど落ち着いたものを選び、中に着るシャツも、えり元にボタンがある「ボタンダウン」も使えるという。女性はインナーをカットソーにして、ジャケットもえりのないV字のものにしてもOKだ。
担当者は「学生は複数の服を買いそろえるのが難しいので、中のシャツやカットソーを変えることで印象を変えられる」とアドバイスしている。
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