【社長を目指す方程式】「対比誤差」を逆手に出世争いを勝ち抜く 自身を差別化する3つの戦略

 
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※画像はイメージです(Getty Images)

 こんにちは、経営者JPの井上です。令和スタート期の経済は、米中関税戦争の激化による中国経済の減速などが響き、上場企業の業績の停滞感が強まっています。上場企業の2020年3月期の純利益は28兆4500億円程度と前期比で1.4%減と小幅ながら落ち込む見通しで、19年3月期に続いて2期連続での最終減益となりそうとの報道。

 一方では相変わらず活発な転職市場で、総務省などのデータによればここ5年間で転職者の数は約25万人も増えており、中でもミドルシニア層の伸びは著しく主要大手人材紹介会社によると50代の転職数はこの3年で倍増しています。

 当座の動静を予見しますと、ミドルの皆さんにとってどうやら令和は、現職のかたも転職をお考えのかたにとっても、椅子の奪い合いが激化する〈混戦時代〉の気配。

 ではこうした状況下で、皆さんはどのような動きを取るべきか? 今回はその戦略、秘策を伝授します!

 〈対比誤差〉とは何か?

 そもそも社長になる人は、キャリアとポストの争奪戦の中を勝ち抜いてきた人たちです。その勝ち抜きかたは当然のことながら百人百様ではありますが、本筋としては「自分をどう差別化して、他よりもより良いパフォーマンスを発揮するか」ということに尽きます。

 そこで今回、ご紹介したいのが〈対比誤差〉の戦略的活用です。

 〈対比誤差〉とは、主に人事評価で使われる用語です。

 絶対基準ではなく、評価者である自分自身あるいは誰かを基準にして、被評価者(部下など)を評価してしまうエラーのことを指します。私たちは放っておくと対比誤差により、被評価者の評価を過大に、あるいは過小に評価してしまう危険性があるのです。

今回の社長を目指す法則・方程式:

対比誤差

 一例をあげれば、上司であるあなたは、自分が得意な部分については部下を評価する際に「こんなことも出来ないのか」とご自身の経験や実績の感覚と比較して部下を過小評価してしまいがちです。逆に、自分よりも優れたスキルや専門性をもつ部下に対しては、実際の評価以上に高く評価してしまうでしょう。

 〈対比誤差〉は人事評価時における評価内容の正当性との乖離を表現する際に用いられ、人事評価の際に評価者が留意すべき事項として用いられます。

 今回、これをあえて逆手に取ろうという訳です。

 社内、上司に対して「自分だけが得意なこと」で勝負!

 デキる人は仕事において、「社内」「顧客・市場」「自分」についてそれぞれ〈対比誤差〉を活用し、差別化を図ります。もちろん当の本人は「対比誤差を使ってやろう」などと狙っている訳ではなく、それまでの経験やセンスで行動している(と思います)のですが、優れた経営者やリーダーほど、この辺の立ち回りが非常に上手いなぁと、私も人材コンサルティングで様々な角度でお付き合いしていて感じさせられます。

 まず一つ目、「社内」においての〈対比誤差〉の使い方から。

 先にご紹介した通り、上司や同僚、あるいは社長は、自分が得意な部分については他人を評価する際に過小評価し、自分よりも優れたスキルや専門性をもつ人に対しては実際の評価以上に高く評価します。

 つまり、「自分が得意で、社内には得意そうな人が見当たらない、少ないものは、何か?」を特定し、それを任される職務のチャンスとする!のです。

 更に直接的に言えば、あなたが課長で上司が部長、事業部長などなら、その上司である部長、事業部長が苦手だがやらなければならないことを代行することを中心に、積極的に上司フォローを買って出る!ことです。

今回の社長を目指す法則・方程式:

対比誤差

 例えば上司が総論は強く人情肌だがロジカルな企画をまとめたり緻密な資料作成が苦手で、あなたがそれが得意なら、「僕がやっておきました。これでどうですか?」とフォローしてあげるタッグを組む。あるいは逆に上司は非常に戦略的論理肌だが、部下たちを個別にコミュニケーションケアするのが苦手で、あなたが部下や後輩たちの気持ちに寄り添うのが得意であれば、マインド的なフォローで常時サポートする。

 これであなたの上司評価が5割増しとなること、出世に関して上司が積極的に推薦して引き上げてくれることは間違いなしです!

 顧客・市場に対して「業界の非常識」で勝負!

 次に二つ目、「顧客・市場」においての〈対比誤差〉の使い方です。

 これは一つ目の「社内」のケースでの上司・同僚を、社外においてみればすぐご理解いただけますね。基本的には「競合がやらない“喜ばれポイント”・“サプライズポイント”を突く」ということになります。

 同業が提供していない、自社が提供できるサービスなどには、何があるでしょうか?

 最近フィットネスジムが非常に多くオープンしていますが、一般的なジムだとどうしても「入会金無料」「月会費、今なら***円」など、ディスカウント(コスト競争)の消耗戦になってしまっているように見えます。

 一方でそんな中、「美尻専門」「クロスフィット専門」「15分でOK」など、カスタマーの特化したニーズ(「綺麗なお尻になりたい」「代謝を上げたい」「短い時間で良いなら」)にピンポイントで対応したものが人気です。これを対比誤差として例示すると運営者の方々から怒られそうではありますが、もちろん効果ゼロではないながらも、本当は訴求しているほど特化して鍛えられたりするものではないので、ある面、人間の知覚や認知を巧く突いていると思います。

 「顧客・市場」についてはもう一つ、そもそも御社の業界の(ネガティブな)常識、何かありませんか? 例えば、値引きは一切しない慣習がある、顧客先には基本的に訪問しない、あるいは逆にむやみやたらに飛び込み営業する、などなど。

 それが顧客にとって、「なんだかなぁ」と思われていることは非常に多いですよね。それを御社が逆転させれば、まさに御社の業界内での〈対比誤差〉で、あなたと御社のイメージが倍、アップすることは確実です。ぜひ探してみてください!

今回の社長を目指す法則・方程式:

対比誤差

 自分に対して「リミッター外し」「自社の隠れた評価基準」で勝負!

 最後に三つ目、「自分」においての〈対比誤差〉の使い方はどうでしょう。

 「自分」については、これまで自分が自分に何かセーブしていたりするようなことについて、リミッターを外して“突出ポイント”を作り、キャラを立てることです。(既にできているかたは、問題なしです(笑)。)

 この件でよく講演やワークショップなどでもお話ししているのは、「自分がこれまでの人生で最も時間とお金を使ってきたこと・もの」について改めて棚卸ししてみて、それに更に時間とお金を注ぎ込む(投資する)ことです。健全なものであることという注釈を念のためつけておきますが(ギャンブルとか不健康なものはNGですよ!)、それに傾斜配分投資し続けることは、あなたの強みに磨きをかけることとなり、自分でも気持ちよくのめり込めるはずですから、投資効果は抜群です。

 もう一つ、企業人としてぜひお薦めしたいのが、「自社の隠れた評価基準」を見定め、そこにアプローチすることです。

 どういうことかと言うと、御社にも大切にしている理念やビジョン、行動指針などがあると思います。それに共鳴共感できているなら、ぜひ、その理念やビジョン、行動指針を体現する行動を強化してみてください。

 経営者からみて、ちょっと残念なくらい自社の理念やビジョン、行動指針を実際に強く意識し行動してくれる社員というものは少ないものです。

 特に御社が創業社長、オーナー社長の会社であるならば、これを実行するだけで、あなたは必ず社長の目に留まります!それはおそらくあなたを、普通に仕事していた時と比べて、別次元でのチャンスに導く…?!(に違いありません。)

 〈対比誤差〉は本来、当人が起こす錯覚であり、それを避けましょうという話なのですが、人間というものはこういうバイアスからはなかなか脱することはできないものです。であれば、周囲の人たちが抱く錯覚を逆手に取って行動してみよう、という策略です。

 「社内」「顧客・市場」「自分」それぞれについて、相対的優位性を常にチェックし磨き込むことで、結果、ミドルとしてのあなたの光る部分、惹きつけポイントが出来上がるのです。ぜひチャレンジしてみてください!

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【プロフィール】井上和幸(いのうえ・かずゆき)

株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO

1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら