CAのここだけの話♪

エコな航路は? 持続可能なフライトを支える航空業界の「イノベーション」

清水みな

 SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第53回はヨーロッパ系航空会社の日本人CAとして乗務2年目の清水みながお送りします。

オランダの航空会社で乗務する清水みなさん。オランダのキューケンホフ公園は世界最大規模の花の公園。チューリップは4~5月ですが、開園中はいつ訪れてもきれいな花が咲いています(本人提供)
チューリップが満開の時期にキューケンホフ公園を訪れることができました。現地の人々より観光客が圧倒的に多い観光地ですが、一度は訪れる価値のある素敵な公園です(清水みなさん提供)
くもりや雨が多いオランダですが、この日は快晴。天気と相まってキューケンホフ公園はどこを写してもとにかく美しかったです。広いので、歩きやすい靴での訪問がおすすめ(清水みなさん提供)
オランダのアムステルダムには伝統的な街並みが色濃く残っています。建物はデザインもとてもおしゃれ。市内は絵になるところが多く、お散歩をするだけでも十分に楽しめます(清水さん提供)
チーズ大国のオランダ。世界的に有名なゴーダチーズはオランダの都市「ゴーダ」からきています。黒トリュフチーズはぜひ試していただきたい一品です(清水みなさん提供)
オランダのユトレヒトは「ミッフィー」作者、ディック・ブルーナ氏の出身地。お子さまも楽しめる街です。実はミッフィーはオランダ語では「ナインチェ」と呼ばれています(清水みなさん提供)
イタリアのトスカーナ地方へ、念願のワイナリーめぐりに行ってきました。ワインはもちろん、美しい景色に終始魅了された旅でした(清水みなさん提供)
同期とフライトが重なった際、ベルギーのブリュッセルを訪れ旬のムール貝を味わいました。同期との乗務はステイ中も一緒に楽しめるので思い出がいっぱい作れます(清水みなさん提供)
休暇を利用して4歳の頃からの親友に会いにアメリカへ。彼女に会うと一番馴染みのあるアメリカンイングリッシュを聞くことができ、いつもなんだかホッとします(清水みなさん提供)

 近年は多種多様な航空会社が運航をしており、世界中を気軽に旅することが可能になりつつありますね。一客室乗務員としても、より多くのお客様に空の旅を提供できる機会が増え、大変うれしく思います。しかし、残念なことに飛行機の運航にはCO2排出や大量の廃棄物排出など、地球環境への影響も伴います。

 地球温暖化や地球全体の廃棄物・ごみ問題が無視できない現代、各航空会社でも環境に配慮した取り組みが行われているようです。

 私の乗務する会社でも積極的にCO2排出量削減や持続可能な空の旅の実現に取り組んでいます。今回はその一部をご紹介いたします。

リサイクルについて熱く語るオランダ人

 オランダでは国土の約4分の1が海抜0m以下という土地柄、温暖化による海面上昇は大変深刻な問題です。そのため環境への関心が非常に高い国です。私が日々一緒に働くオランダ人もエコ意識が高い人が多く、リサイクルの話を熱く語る人も少なくありません。

 日々の生活に必要なものは中古品を売買するネットサイトで購入するなど、日本のフリマアプリと似たWebサイトが日常に深く浸透しています。

 シェアリングエコノミーの確立にも積極的です。あえて中身を見せるゴミ袋をデザイン・開発することによって、不用品として出されたモノを他の人が自由に持ち帰ることのできる仕組みが整えられている自治体もあります。

 そのほかにも、鉄道は風力エネルギーで走行していますし、都市部では市民の3割以上が自転車で移動しています。太陽光発電機能を備えた道路を敷設したり、ビールメーカーは雨水を原料としたビールの商品化もしています。オランダはエコ志向の高さを実際に行動に移し、生活に反映させる力のある国でもあります。

フライトをめぐる環境保全への取り組み

 そんなオランダ人が運営する私の会社でももちろんCO2排出量削減のための投資を惜しまず、日々、下記のような取り組みの強化に尽力しています。

<1>燃費効率に優れた航空機の導入

 燃費効率に優れた航空機はCO2排出量削減効果が大きく期待できます。低燃費を実現した機体として有名なボーイング787は弊社でもその一翼を担っております。特に長距離飛行になる日本便では使用頻度が高く、使用燃料の削減に貢献しています。

<2>搭載物の軽量化

 搭載物の重量が軽いほど消費燃料は少なく済み、CO2排出量も削減されます。お客様のお荷物をお入れするコンテナやコンテナを縛るロープの軽量化(ロープは材質を替えることによって従来品に比べ50%の軽量化を実現)のほかに、機内で使用する食器やトレーも改良を重ね、機内サービス時に使用する食事ワゴンを8kg軽量化することにも成功しています。

 また、お客様に提供する新聞紙や雑誌に関しても紙媒体を廃止し、弊社専用アプリでダウンロードしていただく電子媒体に移行しています。この取り組みは年間36万kgの軽量化を実現しました。もちろん、操縦士や乗務員も乗務ごとに必要な重要情報は会社からアプリを通じて電子媒体で受けとります。これはペーパーレス化といった環境配慮だけでなく、業務効率化にもなり一挙両得です。

<3>分別・リサイクルの徹底

 乗務員は、機内でゴミの回収を行う際もソーダの空き缶やワインボトルはほかのゴミとは一緒には捨てません。別にリサイクル用の箱を作ってまとめるなど、分別を意識して業務に励んでいます。機内でお出しするお食事も地上から積み込まれる際はラップを使用せず、リサイクル可能なアルミの蓋を使用して廃棄物削減に繋げています。

 短距離便では紙コップとプラスチックコップを分別できる回収箱を設置していることもあります。

 このような取り組みもあり、2018年度は廃棄物排出量を前年より9%削減し、リサイクル率を28%増加させることに成功しています。

<4>バイオジェット燃料の使用

 アムステルダムーロサンゼルス便など、まだ限られた路線でのみの使用ではありますが、環境によりやさしいバイオジェット燃料の普及にも努めています。

<5>パイロットたちもエコを意識

 追い風のメリットを受けやすい航路、天候の影響や機体の揺れが最小限に抑えられる航路を選択することも燃料削減に繋がります。

また、機長の判断によっては着陸後に誘導路に移動し駐機場に向かうまでの間は機体の片側のエンジンを切ることもあり、余分なCO2排出を防いでいます。

Sustainability is a Possibility!

 弊社では、上記で挙げた取り組みのほかにも、地上職員や空港職員、整備士など、社全体を通して数々の環境保全活動を日々の業務に取り入れています。その結果、2018年度は前年に比べ約43万tのCO2排出量を削減することができました。これはオランダで約5万5000世帯分のCO2排出量に相当するとのことです。

 人々の生活、日々の移動に欠かせない存在となりつつある飛行機。いつの日か、世界中でエコフレンドリーな飛行が可能になることを心より願っています。

 これからどのようなイノベーションが航空業界を変えていくのかみなさまも楽しみになさっていてくださいね!

幼少期をアメリカとインドで過ごす。高校入学と同時に日本に帰国し大学では法律を学ぶ。卒業後は日本企業勤務を経てから、シンガポールの航空会社に畑違いの転職。現在はオランダの航空会社に勤務。趣味は海外ドラマ鑑賞、読書、散歩。グルテンアレルギーのため、行く先々でアレルギーに対応したメニューを試すのも好き。

【CAのここだけの話♪】はエアソルに登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら