【単刀直言】「政治は戦わないとダメだ」 小泉進次郎・自民厚労部会長に聞く
1人のカリスマより1つのチーム 4月18日に自民党厚生労働部会で「新時代の社会保障改革ビジョン」が了承されました。雇用形態を問わず社会保険に加入する「勤労者皆社会保険制度」の実現など7つの改革をパッケージで盛り込んでいます。働いて所得があるとカットされる今の年金制度を働いても損をしないように変え、人手不足なのに働く時間を調整することを招いている仕組みを変える。戦後の日本の成功モデルでは令和の時代は成功しません。
亜流から本流に
これは1つのストーリーなんです。ビジョンの基本的な考えは3年前の平成28年4月に若手の「2020年以降の経済財政構想小委員会」がまとめた提言にさかのぼります。それが今、議論の場が部会に変わり、党の政策になった。当時は党内で「亜流」でしたが、去年の政府の骨太の方針に「勤労者皆社会保険」は盛り込まれ、「人生100年型年金」も動き出し、今では「本流」になってきた。
「人生100年時代」という言葉も当たり前のように世の中に根付きました。この言葉を初めて使ったのも小委員会です。政治家の武器は言葉。次の時代、何がこの国の課題なのか、一言で国民に理解してもらわねばならない。
今回、挙げたのが「第3の道(リバランス)」です。給付カットや負担増という第1、2の道だけでなく、人口減少は不可避だとの認識のもとに、長生きがリスクにならないよう、経済社会構造全体のアンバランスを正す必要がある。人生100年時代への構造改革の徹底ですね。
ビジョンの原案を厚労部会に示す前は心配もしていました。文言をまとめるのは大変だろうと。実際は前向きなアイデアが相次ぎ、了承を取り付けたときの雰囲気も明るく、最後は拍手が起きた。
政治の世界は政治家同士の好き嫌いも政策に影響します。気にしていたらキリがないし、聞こえないフリをしている。ただ、新たな発想で考えないといけないとの危機感が共有されつつあると感じます。
厚労=国民生活
なぜ厚労分野に取り組むのか? 厚労分野イコール国民生活分野なんです。国民生活を主に扱う分野に課題が山ほどある。やりがいありますよ。年金の納付額と受け取り見込み額などを知らせる「ねんきん定期便」は4月からわかりやすくなった。これは田村憲久元厚生労働相が座長の国民起点プロジェクトチームで実現したものです。
最近よく「1人のカリスマよりも1つのチームだ」と言っています。実際にビジョンづくりは先輩や仲間に支えてもらっている。複雑な社会課題をスピード感をもって処理するには自分の強みを生かしつつ、弱い所は誰かに補完してもらい前に進めないといけない。
農林部会長のときも厚労部会長に就いたときも、政策や知識で張り合っても政治家人生の大半をその分野に費やす族議員にかなうわけはないと思いました。
ならば、分からないことは教えてもらえばいい。私は別で勝負する。田村さんが「突破力がある」と言ってくれましたが、突っ込むときは反発覚悟で突っ込み、世の中に波紋を広げていく。ハレーションがあるところに未来がある。
安定に希望なし
国会改革は、小泉進次郎にはやらせたくないという人がいっぱいいることがよくわかりました。ただ、やっぱり政治は戦わないとダメだと思ったのは、勝負を仕掛けると誰が本当に支えてくれる人かが分かるから。平成は国会改革が第一歩を踏み出すにとどまったが、令和は明確に前に進んだと位置づけられる時代になると思う。
首相を目指しているのか? たぶん出番はないでしょう。僕はどこまでも変化・改革なんです。現状維持に興味はない。今の日本は大きな希望もなければ大きな危機感もない。世の中は小泉を求めていないと思う。だけど僕は、このままの安定はみんなで衰退していくということだし、その先に希望はないと思っているから、変化を訴えている。それがどう受け止められるかじゃないでしょうか。(奥原慎平)
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