【社長を目指す方程式】チームを成功へ導く魔法の数字たち 「7」「30~50」「150」
【社長を目指す方程式】 こんにちは、経営者JPの井上です。社長になる人はその時々で適切なチームを編成し、自社を成功へと導きます。経営とは人と人とを組み合わせてベストなチームを組み戦うゲームであるとも言えるでしょう。
そんなチームが機能するために、最適な数字があるのをご存知でしょうか?それは「7」「30~50」「150」です。今回は、チームを成功へと導く魔法の数字たちについて見てみたいと思います。
人は一人では事を成すことはできない
1975年、エチオピアのハダール村で230万年前のヒト属の狩猟集団の化石が発見されました。同時に死亡したとみられるこの集団は12人だったそうです。どうやら現生人類以前から“チーム”は存在していたようですね。
私たちは、生活のため、仕事のため、チームを作ります。もともと人間のみならず生物は、その生存戦略として集団を形成します。組織や企業も、経済社会の中でより良く生き延びるために生まれたものです。
人は誰しも、一人だけでは事を成すことはできない。そんなときに思い浮かぶのは、エキセントリックな天才、スティーブ・ジョブズ。皆さんの中では、彼は一匹狼の印象があるのではないでしょうか。そんなジョブズは米テレビ番組「60 Minutes」でこんなことを話しています。
「僕のビジネスモデルはビートルズなんだ。4人はお互いの悪い面をフォローし合える関係だった。とてもバランスがよかった。4人が集まると、個々の力を足した以上の力が生まれた。ビジネスにおいても、たった一人で偉業を成し遂げることはできない。人々が集まったチームが偉業を生み出すんだよ」
実際ジョブズは、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアック、最初の成長期のジョン・スカリー(彼には一時アップルから追放されるなど寝首を掻かれましたが…)、アップル復帰後、iMacに始まる黄金期を築いたデザイナーのジョナサン・アイブ、そしてジョブズの死後を継いだベストパートナー、ティム・クック現CEOと、その時々に必ず力あるマネジメント達と経営をしていました。経営チームあってのジョブズであり、世界を変え続けたアップルだったのです。
マジカルナンバー7±2、最強チームと最適チーム
では、私たちがチームとして最もまとまりよく、機動力をもって動けるチームの人数は何人なのでしょう?
今回の社長を目指す法則・方程式:
マジカルナンバー7、ダンバー数
皆さん、「マジカルナンバー7」を聞いたことがあるのではないでしょうか?アメリカの認知心理学者ジョージ・ミラーが「人が一度聞いただけで直後に再生できる記憶容量」について研究し、それが「7±2」であると発表。1956年に発表した論文『マジカルナンバー7±2』から、こう呼ばれるようになりました。
ちなみにこれは、7つの「チャンク(かたまり)」をさしていますが、その後、2001年に米ミズーリ大学心理学教授のネルソン・コーワンが「4±1」こそが正しいマジカルナンバーだと発表。現在では短期記憶についてはこちらの「4チャンクを中心とした3~5チャンクが限界数」と上書きされています。(確かに、マジカルナンバー7の根拠としてよく電話番号が例示されますが、「03-1234-5678」は、「12345678」が「7±2」、というよりも、「03」「1234」「5678」が3チャンク、その中身が2チャンクと4チャンクだから記憶しやすい、の方が説得力を感じます。)
さてでは、「7」には意味がないかといえば、そんなことはなく、チーム編成理論の「FFS(Five Factors &Stress)理論」によれば、最も生産性の高いチームの人数は6人~9人だという結果が出ています。ちなみに、FFS理論とは、5つの因子(受容性や保全性など)とストレス(ポジティブ、ネガティブ)で数値化し、その人の思考行動を把握する理論です。
短期的に生産性の高いチーム(最強チーム)は同じタイプの6~8人編成で、中長期的に生産性の高いチーム(最適チーム)は異なる補完的なタイプの7~9人編成であることが、FFS理論の開発者である小林惠智博士により1980年代に発表されています。
今回の社長を目指す法則・方程式:
マジカルナンバー7、ダンバー数
「スパン・オブ・コントロール(マネジャー1人が直接管理している部下の人数や、業務の領域)」という言葉が経営学にありますが、一人のリーダーが率いるチーム人数としては、チーム生産性の観点からも“同志として目的や夢、想いを共にする”観点からも、まず編成すべき単位は「7人(±2人)のチーム」。まさにあの傑作映画「7人の侍」「荒野の7人」ですね。
ベンチャー企業の成長過程で囁かれる「30人の壁」「50人の壁」
「7人(±2人)」で始まったチームも成長し、やがて別の問題に直面します。
私自身、現在の経営者JPを含めて3社ほどのベンチャー組織を経てきました。その成長過程で必ず乗り越えなければならない人数の壁があることを、数社の創業~成長フェーズを繰り返し経験したことで、実感、痛感しています。それは「30人の壁」や「50人の壁」です。
いわゆる「成長の痛み」と言われるもので、30人を超えるあたりで、それまで阿吽(あうん)の呼吸でやれていたことが通じなくなり、またなぜか誰もが業務に忙しくなり、優先順位や方向づけを見失いがちになり、ただただ目の前の仕事に追われるようになります。
要するに、それまで属人で和気あいあいとやってこられたものが通用しなくなり、しっかりとした業務ルールやコミュニケーションルールを確立する必要が出てくるのです。
一方ではその転換がしっかりできれば、それまでは良くも悪くも個々人の動きや成果によって会社の業績が大きく左右せざるを得ないところから、組織力で戦い成果を出すことができるようになります。会社として組織として、属人リスクを初めて超える人数がおよそ30人です。
今回の社長を目指す法則・方程式:
マジカルナンバー7、ダンバー数
こうした組織発展上の段階もあってか、不思議なことに、この30人、50人という人数を超えるところに見えない壁があり、それまで急成長してきたベンチャー企業がなぜか30人の手前、50人の手前でそこからなかなか人数が増えないということがよく起こります。ポイントは先に述べた通り、仕組み化・ルール化ができているか否かです。私の体験的にも、50人を超えると、一方ではコミュニケーション不全などの問題も起きやすくなるのですが、経営的、組織的にはナレッジ(知識)の蓄積がそれまでとは段違いに進みやすくなります。
この壁を突破すれば、次は一気に「150人」まで駆け上がるのみです。
「ダンバー数」の「150人」は、人がチームとしてまとまれる最大値
チームの人数というテーマでは、この人をご紹介しない訳にはいきません。それはロビン・ダンバー氏です。
イギリスの人類学者、進化生物学者のロビン・ダンバーは、世界各国古今東西の民族グループを研究する中で、同じ規模の集団が繰り返し登場することに気がつきました。これを「親密さの集まり」と呼び、次のように分類しています。
・3~5人…最も親密な友人関係を築ける人数
・12~15人…誰かが亡くなった時に深く嘆き悲しむ友人や家族の人数
・50人…オーストラリアの先住民族アボリジニやアフリカ南部の狩猟民族サン人が移動する時の平均的な規模に相当
・150人…「ダンバー数」
ダンバーは、チームサイズには上限があり、それは147.8人であるとしています。これは人間の脳が性格や行動を記憶・蓄積できる他者の上限人数です。端数を切り上げた「150人」を、彼の名前にちなんで「ダンバー数」と呼んでいます。
ダンバーの発見した「親密さの集まり」の段階で示す人数を民俗学の集団分類と重ねると、次のようになります。
・5~9人=「社会集団(クリーク)」…最も親しい友人やパートナーの数
・12~15人=「シンパシー・グループ」…ほぼどのような状況下でも心から信頼できる人の数
・30~50人=「一団(バンド)」…危険な国を安全に往来できる小さな団体
・150人=「フレンドシップ・グループ」…共同体の中で一緒に暮らすのに最適な人数
・500人=「部族・種族(トライブ)」…出会うと会釈する程度の顔見知りの人数
・1500人=「共同体(コミュニティ)」…人間の長期記憶の情報数の限界、頭の中で名前と顔が一致する人数
私たちは、まず近しく一枚岩で働ける7±2人でチームを編成し、それが数チーム組み合わさって30~50人の会社/事業部となる。事業成長し150人になるところまでは、お互いがどのような人か、どのようなスキルや能力をもちパフォーマンスを出しているかを把握できる。それを超えると、1500人までは、同じ会社であることは認識できるが同じ組織に所属していない限り、人となりの詳細は分からない……。このような原理原則があるのです。
どうでしょう? あなたの会社や部署は、この「数字の魔法」に合致して課や部、事業部が編成されていらっしゃるでしょうか?
数千名企業でも数万名規模の企業であっても、組織はこの「7」「30~50」「150」で組み立てられるのがベスト。社長を目指すあなたは、この数字の魔法を自チームに折り込み、最適チーム編成で最強リーダーを目指しましょう!
【プロフィール】井上和幸(いのうえ・かずゆき)
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
経営者JPが運営する会員制プラットフォームKEIEISHA TERRACEのサイトはこちら。
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。
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