【マック&ユニクロ流人材育成】「バイトテロ」を防ぐ鉄則 あなたの会社は教育をしていますか?

 
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 【マック&ユニクロ流人財育成】2013年にコンビニエンスストアや外食店でアルバイトのSNS不適切投稿が世間を騒がせましたが、最近またアルバイトによる不適切投稿が頻発するようになりました。当時、企業側が社内で実施した教育が、その場しのぎの教育でなかったか? 社内の仕組みとして継続して実施されていたか? それらを今一度見直してみる必要があります。アルバイトは相当数が毎年入れ替わります。教育を継続しなければ効果がどんどん薄れていくのは当たり前です。

 若者の意識が問題なのではない

 近年の若者の意識が低くなった、というよりはSNSが普及したことによって情報発信のツールが多種多様になったからこそ発生している問題だと思います。

 飲食店を運営している弊社のお客様は、不適切投稿のリスクを回避するために、「会社名を開示しない事」、「会社情報を流出すること」を禁止としており、マニュアルに明記をしたり社内研修を行うことで教育を行っているとおっしゃっていました。

 また、私の会社が運営している講座でも、パート・アルバイトや新入社員向けの講座の中でSNSの不適切投稿によるリスクについて、過去の投稿事例を踏まえながら伝えている講座があります。

 既に知っている内容でも、研修等の場で改めて確認を行うことで意識を定着させていくことも必要です。

 「バイトテロ」を防ぐためにもSNS投稿の危険性をアルバイトに認識させること、不適切投稿が発覚した場合の企業側での対処法を定めておくことが必要です。

 以前と比較するとSNS投稿に関しての社内喚起をする企業は多くなっていますが、今一度内容を見返し、再度発信を行わなければならない時期が訪れていると思います。

 被害を受けるのは会社だけではない

 では、具体的にどのような対策を行えばよいのか?

 それは、アルバイトへの教育と、店長への教育です。そして、それぞれポイントや注意点も異なってきます。

 アルバイトに対しては、入社時のオリエンテーションでSNSの投稿ルールに関して伝えるようにしましょう。

 SNSの特性、会社としてどのようなリスクがあるのか、そして個人にはどのような処罰があるのかを徹底的に教え込みます。

 SNSでの炎上は企業も大きなダメージを受けますが、それよりも個人のダメージのほうが大きいのです。店にとって大変なことになる、店に大きな被害が出るという話ばかりでは、相手もきちんと理解できないかもしれません。

 個人に対するダメージは「軽い気持ちでやった」ことへの対価としては全く割に合わないことを理解してもらうことが大切です。多額の賠償責任を負う可能性、その後の人生に多大なマイナスのダメージを与えることを認識させるべきです。

 また、業務上知りえた情報を漏洩しないことも、企業情報を守るために伝える必要があります。知識の有無だけでも大きな差があり、非常に効果的です。

 またオリエンテーションだけで終わらせるのではなく、定期的な注意喚起は必要です。

 店長には「観察力」が必要だ

 一方、店長に対しては、まず日々のコミュニケーションをしっかり取ることとアルバイトの勤務状態を観察するように伝えましょう。根本的な話ですが、そもそも不適切な行動をさせないようにすることが一番です。

 不適切な行動をしてしまう理由として、仕事が面白くないことや手が空く時間があること、職場に不満があるということがほとんどです。

 店長がアルバイトに対して意識を向けることで気づくことがあると思います。

 信頼関係を築くことで不適切な行為を防ぐだけではなく、会社の戦力として日々の業務を行ってもらうようにしなければなりません。そのアルバイトが店長との信頼関係があり、会社やお店のことが好きなのであれば店長や店舗に迷惑をかけるような行為は起こりません。

 さらに店長に対しては、それでも不適切投稿が発覚した場合にどのような対処を行うのかを教育しておきましょう。

 不適切投稿に気づいたら、まずは投稿した本人にアカウントや投稿の削除を要求すること。一方で、店長自身が上司に報告するタイミングや手段を伝えることが必要です。

 炎上が大きくなるようなら、それ以後の対応はすべて会社に任せたほうが賢明です。

 もちろんSNSはデメリットだけではなく、会社やお店でPRしたい情報を一気に拡散することができるといったメリットもあります。

 会社としてのアカウントを立ち上げ、ルールを明確化したうえでアルバイトに協力をしてもらうと大きな効果を出せるかもしれません。

 今後も普及が続いていくツールだからこそ、うまく活用して会社の売り上げに貢献していきたいものです。

【プロフィール】有本均(ありもと・ひとし)

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン社長

1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」。

【マック&ユニクロ流人財育成】は有本均さんが人を上手に育て会社を成長させる人材育成のノウハウを伝える連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら