【社長を目指す方程式】あなたや部下は「熱意あふれる社員」か? 明らかになる12の質問

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 【社長を目指す方程式】こんにちは、経営者JPの井上です。

 ここのところ、外食・コンビニでの従業員不祥事の報道が相次いでいます。いずれも従業員が厨房やレジで食材に不衛生な行為をした上で調理や提供をしていたのではというもの。こういう行為をSNSで流せば自分がどのようなことになるか分かるだろうと思いますが、そもそもこうした行為をやること自体が「日本人的に」信じられませんよね。

 東日本大震災の被災地で、過酷な状況下にも関わらず誰もが道徳的行動を取っていたことに対して世界中から礼賛が寄せられましたが、それに対して今回のこの外食・コンビニでの“モラルハザードシンドローム”の、相次ぐ発覚…。残念です。

 「仕事熱心」「真面目」「誠実」な国民性という印象のある日本人。しかし、衝撃の事実データがあるのを、皆さん、ご存知でしょうか?

 米国最大の調査会社、ギャラップ社が2017年に発表した調査結果(State of the Global Workplace:Gallup,2017)によると、日本企業はエンゲージメント(高いロイヤルティーや好感を持ち、積極的な関与や行動が伴うなど強い絆で結びついている状態)の高い「熱意あふれる社員」の割合がたったの6%(ちなみに米国は32%)。これは調査した139カ国中132位と最下位レベルです。さらにはなんと、「やる気のない社員」が70%をも占め、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」が24%も…。

「何をやれば良いのかが明確になっているか?」

 100名の会社で、やる気に満ち溢れている社員は6人。70人はやる気なく、24人に至っては周囲に不満を撒き散らしている……こんな会社に入社したくないですよね? しかしこれが今の日本企業の平均的な状態なのだと…。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ギャラップ Q12(「キュー・トゥエルブ」、従業員エンゲージメント計測の12の質問)

 御社はどうですか?「うちはさすがにそこまでは酷くないよ」、あるいは、「もしかしたら、当社も…」。

 どうすれば御社の従業員エンゲージメントの状況が分かるか、また、エンゲージメントの高い従業員を育むにはどうしたらよいのか?

これについて、まさにこのギャラップ社の調査項目自体が、答えを教えてくれます。

 この調査は「ギャラップ Q12(キュー・トゥエルブ)」という12項目の質問からなっており、その各質問項目が満たされた人はエンゲージメントの高い、やる気に満ちた状況にあり、そうした人たちで構成された組織はエンゲージメントの高い、やる気に溢れた組織となるのです。

 今回はこの12問、全問を見てみましょう。上司である読者の皆さんの具体的ヒントが多く得られること間違いなしです。

 まず最初の2問です。

・Q1 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかが分かっている。

・Q2 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。

 この2問が確認しているのは、会社や所属組織が自分の役割や期待値、そのためのセットアップをしっかりしてくれているか否かについて。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ギャラップ Q12(「キュー・トゥエルブ」、従業員エンゲージメント計測の12の質問)

 そもそも、「キミにこれをやって欲しいんだ」ということがはっきりしていなければ、本人も何に仕事上の情熱を注げばよいのか分かるはずもありませんからね。Q2の「必要なリソースや設備」を提供しているかというのも見逃せません。やれと言われても、手立てがなければ当人もどうしようもありませんし…。

「認められる機会、場があるか?」

 続いてQ3からQ7までの5問です。

・Q3 私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。

・Q4 この1週間の間に、良い仕事をしていると褒められたり、認められたりした。

・Q5 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる。

・Q6 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる。

・Q7 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる。

 ここで確認していることは、本人が職場において存在感を持て(居場所があると思えて)、周囲に認められ、自分の成長を後押ししてくれる人や場があると思えているか否かについてです。

 この部分は私の解釈では<当人自身のモチベーションに関わる部分>で、私は日頃、研修や講演で、次の公式をお話ししています。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ギャラップ Q12(「キュー・トゥエルブ」、従業員エンゲージメント計測の12の質問)

「モチベーション=(やりがい×成長)+(承認×仲間)」

 中長期的なモチベーションは、自分がやりがいと成長を仕事に感じることができ、職場において認めてくれる仲間たちに囲まれていることから生まれ保ち続けられるのです。

「会社、同僚に共鳴共感できているか?」

 Q8からQ10までの3問では、自分の会社や同僚に共鳴共感できているかを問うています。

・Q8 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる。

・Q9 会社の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる。

・Q10 仕事上で最高の友人と呼べる人がいる。

 自分自身の頑張りが第一、とはいえ、自分が身を置く場が魅力的なものでなければ、頑張りようもありません。自分の心を震わせてくれる会社のミッションやビジョンがあるか。この人たちとともに切磋琢磨したいと思える同僚や上司に囲まれているか。高みを目指して奮闘努力しようと思える良きライバルでもあり良き友が存在しているか。

 ある面、まずはここがエンゲージメントの高い組織作りのスタートラインだなと思います。

「成長できる機会、認められる機会、場があるか?」

 最後に、次の2問。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ギャラップ Q12(「キュー・トゥエルブ」、従業員エンゲージメント計測の12の質問)

・Q11 この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合いについて話してくれたことがある。

・Q12 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った。

 それまでの10問での投げかけを受けて、改めて総括してという設問に見えますね。加えて、半年、1年、という時間軸が入っていることで、「いま、どうですか?」ということを回答者に強く意識させている設問でもあると感じます。

あなたの成長を気にかけ支援してくれている人が存在しているか。学び、成長する機会を実際に得ることができているか。

 さて、皆さんの部下たちの状況は、いかがでしょうか。皆さんご自身は、どうですか? 御社全体としては、いかがでしょう?

 もちろん、いきなりこの12の質問を満点回答させるようなセットアップは、なかなかできないものではありますが、多くの項目が、上司の皆さん自身の取り組みで創出可能なものでもあることを、感じていただけたのではないでしょうか。

 我々が、それぞれ自身の組織でギャラップQ12に取り組み、もし同社が次回の定点調査を実施したら、ぜひともスコアを大幅に引き上げて139カ国中の最上位に入り、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」6%、「やる気のない社員」24%、「熱意あふれる社員」70%、にしたいものです!

【プロフィール】井上和幸(いのうえ・かずゆき)

株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。

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