【働き方ラボ】幸せに働くために… 嵐の活動休止から学ぶ「転身」の流儀
とくに大ファンというわけではないが、ジャニーズがそれなりに好きだ。幼い頃からマッチさん(近藤真彦)のファンである。なんせ、たのきんトリオ(田原俊彦・野村義男・近藤真彦をこう呼んだ)世代なのだ。(常見陽平)
「マッチ」と呼び捨てにせず、「マッチさん」と呼ぶのが私の流儀だ(ジャニーズ事務所の構成員のマネをしているだけなのだが)。デビューした頃の野島伸司ドラマ『人間・失格』にハマったこともあり、KinKi Kidsの二人にも熱い。自分自身も若い頃にジャニーズ事務所と新日本プロレスを受けなかったことをずっと後悔している。
さて、嵐の活動休止という衝撃的なニュースが飛び込んできた。メインボーカルの大野智さんの強い意向を受けての活動休止だとのことだ。マッチさん、KinKi Kidsほど彼らに対しては熱くない。ただ、5人の構成員は好感度の塊のような人たちだし、活動休止のニュースに驚いたのは言うまでもない。「国民的アイドルグループ」というのはそういうことだろう。
この記事を書いている2019年1月29日現在でも、様々な情報が飛び交っている。ただ、SMAP解散と比べるとバタバタ感や、スキャンダラスな臭いはない。「残念だけど、応援しよう」という空気感に満ちていないか。Twitter上で盛り上がった「#大野くんの夏休み」というハッシュタグも、この空気感を象徴している。彼らの代表曲風に言うならば「Happiness」が感じられる。
個人的には、私は今回の活動休止には大賛成だ。嵐とは違う場の5人を見たいし、成長・変化して再始動する姿も見てみたい。新しいユニットやコラボが生まれることにも期待している。なんせ、SMAPの時のような泥仕合は見たくない。活動休止する2020年12月31日までに、どのような嵐を見せてくれるのかも楽しみだ。
舞台裏の真相はともかく、今回の嵐の活動休止は少なくとも印象は好印象だった。ポジティブな決断だったといえるだろう。
嫌になる、飽きる前の転身のススメ
この嵐の引き際に私達が学ぶべきことは何か? それは「転身」の流儀だ。「君たちはどうやめるか?」と問われているかのようだ。
完全に嫌になったから辞めるのではない。人間関係やコンディションが最悪の状態になる前に辞めるという引き際から学びたい。
自分自身も何度も転職してきたし、数々の転身を見てきた。まず、気をつけたいのは、後先考えずに退職し、失業しながら転職活動を続けることだ。辞めることは否定しない。いまだにブラック企業は存在する。使い潰され、精神や肉体が壊されてしまうと再起不能になってしまうかもしれない。逃げることも立派な選択肢である。
もっとも、離職しながらの転職活動は生活の不安から逃げられない。転職先から足元を見られ、年収などの条件面で買い叩かれることもある。在職しながら、現在の職場や仕事を直視しつつ、今、取り組んでいる仕事で何かを達成する瞬間や、飽きてしまう瞬間を視野に入れつつ、次の転身を考えたい。
転身は別に転職とイコールではない。異動という手だってある。企業によっては、時期的に経営幹部や管理職の異動や昇進・昇格はもう決まってしまっているが、中堅~一般の社員は今からでも人事異動を実現する可能性だってある。異動したい部署があるならば、その責任者や管理職に直談判する手もある。
私は数々の異動武勇伝を見聞きしてきた。私自身で言えば、友人の結婚パーティーで役員にご挨拶しアピールしたこともある。カラオケボックスの廊下で希望部署の事業部長と遭遇し、異動先への熱い想いと、渾身の宴会芸を披露して異動を勝ち取った者、VIP取引先の部長に「○○君を○○部に異動させてください」という電話をかけさせた者、役員を呼び出し乾杯した直後に「辞めます」と言ったあと、やりたいことをプレゼンし異動を決めた者など、武勇伝は枚挙に暇がない。転職も同様だ。中には、不倫相手にお願いしたというかなり黒に近いグレーなやり方をした者もいるのだが。
異動は転職ほど環境が劇的に変わらないし、様々な手続きも不要なので、リスクなく次の道に進むことができる。転職を考えている人も、異動という選択肢も考えておきたい。
考えてみると、嵐の場合も「組織変更」や「異動」に近いものだ。今のところ、5人の誰もジャニーズ事務所を退所しないのだから。
というわけで、幸せに働くということを勝ち取るためにも、嵐に学んで嫌になる前、飽きる前の転身を考えよう。この春、転身で嵐を起こせ!
【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。
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【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。
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