Fromモーニングピッチ

宇宙産業はSDGsの動きも後押し 国内市場の停滞打破はベンチャーが鍵 (1/3ページ)

森智司
森智司

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は宇宙です。

 国家主導から民が主役に

 2010年までの宇宙産業は国家主導の宇宙開発と科学探査の目的が主で、民間企業は限られた一部が関わるだけでした。しかし、直近の10年で構造は大きく変わってきています。その理由の一つは、宇宙輸送サービスを行う米スペースXに代表されるユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の出現です。これによって“民主化”が進んだほか、GAFAをはじめとした様々な領域の企業が参入し市場のすそ野が急激に拡大しています。また、イノベーションも活発に行われ、構造変化を促しています。

 実際、宇宙産業の世界市場は右肩上がりで成長を続けており2020年は4470億円ドル(約49兆円)と、2010年比で約1.6倍の規模にまで拡大しました。

 一方、国内市場は3000億円程度で停滞しています。ユニコーンが出現していないことや宇宙機器の活用があまり進んでいないことが要因ですが、伸びる可能性は大だと思っています。

 成長の余地が大きい低軌道と月

 成長の余地が大きい領域は地表から100~2000キロに相当する低軌道と月です。ジェフ・ベソス氏(米アマゾン創業者)とリチャード・ブランソン氏(ヴァージン・グループ創設者)が宇宙船を打ち上げましたが、飛行したのは100キロという低軌道圏です。

 低軌道の分野で注目されているのは地球に多数の衛星を張り巡らせてインターネット網やデータ観測網を構築する衛星コンステレーションです。もうひとつが合成開口レーダー(SAR)衛星です。従来の光学衛星では見えなかったものが確認できるようになり、悪天候や夜間といった状況下でも観測が可能です。

 一連の技術は様々な分野で利用され、イノベーションを生み出しています。衛星コンステレーションは北極・南極圏を除く全世界を対象に、高速通信を低遅延で提供できるようになりました。SAR衛星は自動車工場の駐車場の状況を把握できるため、工場の稼働状況や自動車会社の売り上げを事前に予測することも可能です。

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