デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はモビリティで、自動車のCASEと空飛ぶクルマの領域に焦点を当てます。
900兆円の新市場が誕生
三菱総合研究所の調査によると、2018年の世界の自動車関連市場規模は650兆円でしたが、次世代移動サービス(MaaS)の普及によって2050年には既存の600兆円に加え900兆円の新しい市場が誕生する見通しです。自動車産業が誕生して以来の大きなパラダイムシフトと言ってよいでしょう。
これに伴いモビリティ系スタートアップへの投資額は数年連続で10兆円規模に達しており、2019年以降は1000億円以上の巨額出資案件が顕在化しています。2021年に入ると海外では、特定買収目的会社(SPAC)との合併をはじめとして上場ラッシュの様相を呈しています。日本ではモビリティ系分野でユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)は誕生していませんが、Mobility Technologies、ティアフォー、ZMP、Global Mobility Serviceの4社が、時価総額上位20社のネクストユニコーンにランクインしています。
CASEと空飛ぶクルマの領域が活発化
とくにベンチャーの動きが活発なのは、Connected(コネクテッド)、Autonomous (自動運転)、Shared(シェアリング)、Electrification (電動化)の頭文字から取った「CASE」と、空飛ぶクルマという5つの領域です。
【Connected】
車内では車載ナビを活用してルート案内したり音楽を楽しめたりしますが、今後は決済やレストランの予約、映画鑑賞などの機能も拡充されていく見通しです。車外については保険や広告への応用が進んでいます。例えば大手損保会社はコネクテッドカー(ネットにつながる車)のデータ蓄積・解析プラットフォームを運営している英Wejoと提携して、同社が自動車メーカーから収集したデータを解析した上でサービスを提供する予定です。
【Autonomous】
自動運転の領域だと米国と中国では、WaymoやPony.aiによる地図アプリから乗車予約が可能なロボタクシーが登場しています。また、米国の高速道路ではTuSimpleが自動運転トラックの試験運用を行っています。国内ではロボットによる配送の実証実験も進んでいます。
【Shared】
COVID-19影響で苦境に陥っているスタートアップが多い中、マイクロモビリティに関しては電動キックボードに対する規制緩和が見込まれるため注目度は高いです。
【Electrification】
電動化についてはバッテリーの製造から開発・製造、利用に至るサプライチェーン全体でさまざまな提携が進んでいます。とくに注目されるのが開発・製造分野です。中国では新興のEV(電気自動車)メーカーが量産車を販売していて、販売量(2021年1~5月)トップ20のモデルのうち、新興メーカーから5モデルが入っています。また、スマートフォンメーカーや自動運転スタートアップ、ICT企業がEVの開発・製造事業に続々と参入しています。
【空飛ぶクルマ】
日本での事業化の目標は2023年で、テトラ・アビエーションが7月に予約販売を開始しました。また、空飛ぶクルマのスタートアップは電子機器メーカーと提携して飛行制御システムを確保したり駐車場事業者と連携、空飛ぶタクシーの乗降場所として立体駐車場を整備したりする動きも見られます。
本日はこれら5領域の中から5社を紹介します。