「Founders Night Marunouchi」は、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得ることを目的に、三菱地所が運営する起業家支援コミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」との共同開催のイベントシリーズです。2019年10月より月2回、新丸ビル10階にある東京21cクラブにて開催しており、2020年4月からはオンラインにて開催しています。
2021年5月26日に開催された今回のイベントで語られたテーマは「知財戦略」です。
何年も汗を流しながら研究、開発してきたアイデアやプロダクト。それらはいつ、どんな形で盗用されてしまうかわかりません。大切なプロダクトや技術を「盗用されないように」するのが知財戦略です。しかし、知財戦略が大事だとわかっているものの、何から始めたらいいのかわからない…という経営者の方は多いのではないでしょうか。
今回は知財戦略のプロフェッショナルである、株式会社AI Samurai代表取締役社長の白坂一さんとMASSパートナーズ法律事務所共同代表パートナーの溝田宗司さんをお呼びして、スタートアップにおける知財戦略について語っていただきました。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務めています。
知財は“守る”ためではなく、“攻める”ためにある
「そもそも知財戦略とは『特許をとる』『商標をとる』ことだと思われがちですが、あくまで事業をうまく成長させるための手段にすぎないです」
イベント冒頭、そう語ったのはAI Samurai代表の白坂さんです。白坂さんは弁理士として知的財産分野を長年経験し、特許業務法人白坂を設立しました。2015年には「人間とAIの共創世界」をミッションとするAI Samurai(旧ゴールドアイピー)を創業。特許調査を行い、特許取得の可能性を評価するWebサービス「AI Samurai」を開発しています。
白坂さん「知財戦略といわれても、なかなかイメージできる方は多くないのではないでしょうか。企業の最終的な目的は『事業拡大』や『売上』だったりします。その目的を達成するための手段の1つとして、知財戦略を考える企業が今増えてきています」
白坂さんの発言にうなずきながら「知財戦略は、発明を第三者から“守る”ものと思われがちですが、“攻める”ためにやるべきだ」と語るのは、MASSパートナーズ法律事務所 の溝田さんです。
溝田さんは弁理士として日立製作所で知財業務全般の業務に従事。その後、弁護士資格を取得、法律事務所で経験を積み、2019年2月にMASSパートナーズ法律事務所を共同創業。知財に関して幅広くカバーしつつも、特にスタートアップの知財トラブルを専門としています。
溝田さん「知財が“攻める”ものというのは、事業拡大の起因になる可能性があるからです。有名な事例でいうと、 Intelの知財戦略があります。同社はPCの開発におけるマザーボードの知財を台湾メーカーに提供。一方で、マザーボードに組み込む『CPU』に関する独自技術は、完全にブラックボックス化したのです。台湾メーカーがパソコンを大量生産するのに伴い、IntelのCPUも必ず使われるという仕組みを作り、ビジネスを拡大していきました」
大企業×スタートアップ、協業すべき企業の見分け方
スタートアップの知財トラブルを専門とする溝田さんは、近年の動向をみて「スタートアップの特許・商標はとっておくべきという認識が高まりつつある」と語ります。
しかし、現状はまだまだ知財戦略に関する理解を高めるフェーズにあると強調します。その理由として、事業拡大に向けたオープンイノベーション戦略や業務提携など、さまざまな形で他社と組む機会が増加するにつれ、知財トラブルも増えているからです。