Fromモーニングピッチ

サイバー空間の経済活動を支援 台頭著しいXR系ベンチャー (1/2ページ)

山藤雄平
山藤雄平

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はVR(仮想現実)とAR(拡張現実)、MR(複合現実)などを総称したXR特集です。

 ここで改めてXR領域の定義を説明します。VRは実世界と切り離されたデジタルな仮想空間に没入するものです。ARはあくまで現実世界に一部デジタル情報を付加するもので、「ポケモンGO」はまさにARです。MRはARと異なりデジタル情報をメーンとして現実情報を付加するものです。

ヘッドマウントディスプレイが牽引役

 XRの世界の市場規模をみますと、2020年は約1兆2000億円でしたが、2024年には約7兆3000億円まで拡大するとみられています。大きな伸びを示す要因は、COVID-19によって非接触というニーズに応えた商品の人気が高まっているからです。代表的な事例が頭部に装着するヘッドマウントディスプレイで、安価で軽量なタイプが市場を牽引するとみられています。

 国内のXR領域の市場も堅調に推移しています。矢野経済研究所によると2019年の市場規模は約4000億円でしたが、2025年には3倍の約1兆2000億円にまで成長するとみられています。ヘッドマウントディスプレイ用の5Gなど基盤技術の開発も進んでおり、スマートフォンのようにBtoCで普及しBtoBで展開されるという動きが予想されます。

遠隔アドバイスで効率性が9割改善

 こうした動きを踏まえ、将来的にXRが普及するための流れと、各フェーズで必要な技術を説明します。最初は一般消費者向けにゲームや音楽、スポーツといったエンターテインメント要素が強い分野でのXR技術の活用が期待されます。それには5G環境の整備やデバイスの軽量化、臨場感をもって楽しむための立体音響などが重要な要素となってきます。

 その後、研修や教育などへの普及が想定されます。実際に自動車メーカーではARを導入して本社のサポートセンターと技術者が視界を共有化し、技術アドバイスを行っています。これによって車体修理時の効率性は93%も改善したという事例も出てきました。

医療や自動車分野のDX化に寄与

 このフェーズに移行するとAIによるトレーニングの効果の可視化に加え、個人や企業に合わせたコンテンツのカスタマイズが重要になってきます。また、自身の動きを画面の向こうにいる人や組織と連動させるためにも、現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録するモーションキャプチャ技術の高度化に注目が集まっています。

 最終的にはとくに医療、自動車、建設、製造業といった領域に対するDX実現のための活用が期待されます。このフェーズでは遠隔手術を行うための触覚デバイスが使用されています。また、3DCADデータなどをリアルタイムでやり取りするため、端末の近くでデータ処理を行うことにより負荷を解消するエッジコンピューティング技術が求められています。

リアルな感染症診療をVRで体験

 スタートアップと大企業などとの連携も進んでいます。ジョリーグッドは順天堂大学と連携し、実際のCOVID-19診療病棟を舞台にしたリアルな感染症診療をVRで体験学習できるシステムを開発しています。MESONは大手広告代理店と連携し、現実世界を仮想空間に再現するデジタルツイン上で、遠隔地のVRユーザーと現実世界のARユーザーがコミュニケーションを行える場の構築に挑戦しています。

 今回はメディア・広告やファッション、ライフスタイルなどの領域から5社を紹介します。

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