活用目的を定めておくことが重要
最後に5Gの活用を検討する際の重要なポイントを指摘しておきます。それはエンドユーザー側の活用目的をしっかりと定めておくことです。「やってみないと分からないので、取り敢えずやってみよう」といった考え方はとても危険です。目的なしで実証実験を行った場合、よい結果だったのか悪い結果だったのかを判断できず、本格導入に進められないまま終了するリスクが高くなるからです。こうした事態を防ぐため、目的を明確にした上で、各企業ならではの強みに根差したビジネスモデルの検討とパートナーの選定を行うことが大変重要です。
今回はサービスアプリケーション、プラットフォーム、ネットワークソリューション、デバイスという4つの領域から5社を紹介します。
東京とラスベガス間でロボット制御
アプトポッド(東京都新宿区)は、低遅延の大容量データストリーミングを実現する高速IoTのプラットフォームを提供しています。2018年のリリース以降、モビリティやロボティクス分野を中心に、約30社・50のプロジェクトで採用されています。具体的な事例は東京とラスベガス間のロボット遠隔制御や、AIを活用した工事現場箇所の自動検知などです。
屋外で使えるARスマートグラス
AR(拡張現実)スマートグラスは、ブラウザが使えず映像が暗くて重いといった問題点を抱えています。HMS(福岡市中央区)が提供するのは、こうした課題を解決したスマートグラスです。屋外の現場でも使える鮮明な画像が特徴で、重量は150グラム以下と従来品の4分の1程度の軽さを実現しました。5Gとの組み合わせによって、業界ごとにプラットフォームを構築していきます。
空中からキュウリを自動収穫
AGRIST(宮崎県新富町)は、AIを搭載したピーマン・キュウリの自動収穫ロボット「L」の開発、販売を行っています。地上走行型とは異なり、ビニールハウス内に張り巡らせたワイヤーをロープウェイのように移動しながら収穫する点が特徴です。ロボット自体は5Gを活用し、農場の画像データを集めて収穫の認識精度を上げていきます。こうした取り組みによって、総合的に営農を支援するソフトの開発を目指します。
メッシュ技術でケーブルを大幅削減
PicoCELA(東京都中央区)は、網の目のように張り巡らせるメッシュ技術を活用してLANケーブルを大幅に削減、広域のWi-Fi環境を低コストかつ短期間で整備します。例えば東京ドーム4個分のスキーゲレンデでは85%分のケーブルを削減し工事費を50分の1に削減しました。ロックフェスティバルに設置したフードスペースは、1時間に2000ユーザーが同時接続できる規模ながら設営は3時間で済みました。
医療データを3次元で“体験”に変える
Holoeyes(東京都港区)は現実と仮想世界を融合するXR(VRやARなどの総称)技術を活用、医療データを3次元で「見える」から「体験する」に変える手術支援サービスを提供しています。CTスキャンなどの画像から構築された3次元データを、VRやARデータとして表示することが可能で、手術前のシミュレーションや症例の検討に用いられています。また、臨床の解剖を学べるスマートフォン向けVRアプリも提供しています。
5Gはこれから、本格的な発展段階に突入します。これに伴い、スタートアップの台頭にも拍車がかかるとみられています。
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