Fromモーニングピッチ

コロナで成長に加速 SaaS系ベンチャーが新たな産業革命を実現 (1/2ページ)

竹田亮士
竹田亮士

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はインターネット経由でソフトウエアを利用する「SaaS(サース)」で、テーマ概観を説明するのはNext Core事業部の竹田亮士です。世界中のスタートアップと大手企業をオンラインで結ぶSaaS型プラットフォーム「six brain」事業に携わっています。

 我々の生活の身近な存在に

 SaaSの仕組みは月額・年額課金制で、サービスを利用したい期間を選択し、自由にプランを変更できる点が特徴です。こうした使いやすさが知られるようになり、直近の5年間で私たちの生活にとって身近な存在になりました。とくにCOVID-19の拡大によってSaaSビジネスが一気に広がった2020年は節目の年といえるでしょう。

 Zoomによる波及効果が顕在化

 その中で大きな伸びを示したのはビデオ会議システム「Zoom」です。在宅勤務や時差出勤への取り組みが広まったことで、3月頃からオンライン会議の開催が一般的になり「Zoom飲み会」も話題になりました。

 大手企業でZoomが普及したこともあってベンチャー企業を中心に、インターネット上でのセミナーとして位置づけられているウェビナーが一般に浸透し、新規顧客を獲得する流れが加速しました。また、オンラインでの名刺交換システムが登場したことで、ウェビナーの有効性が格段に向上しました。

 個人向けでもZoomやLINEを活用したオンライン帰省が話題になるなど、生活形態が大きく変わりSaaSの普及を後押ししました。

 2022年の世界市場は15兆円近くに

 富士キメラ総研によると2019年度の国内SaaS市場の規模は約6000億円でしたが、2024年度には約1兆1200億円と約1.9倍の規模に拡大する見通しです。働き方改革や人手不足の問題など課題解決に向けた業務の効率化や、COVID-19の拡大防止策としてリモートワークが広がり、非対面でのコミュニケーションを実現する需要が増加したことも要因といえるでしょう。

 世界ベースでは年間の平均成長率が11.3%と高水準で推移しており、2022年には2019年比で1.4倍の約14兆6000億円まで拡大するとみられています。

 スタバはデータカンパニーに

 また、SaaSの普及によって蓄積された膨大なデータを分析、活用することによって新たなビジネスチャンスにつながる動きが顕在化しています。

 スターバックスはデータ・AI(人工知能)大手の米データブリックスと連携し、3万店以上の消費・在庫データなどを自社運用のオンプレミスからクラウドに移行しました。統合データ分析により、データの処理能力が50~100倍に高速化した結果、全店で均一だった在庫管理から店舗ごとの精緻な管理に切り替わり、スターバックスはパーソナライゼーションと正確な需要予測を行えるデータカンパニーへと生まれ変わりました。これは他の産業でも起こり得る産業革命の第一歩です。

 プロセッサー革命が新ビジネスの原動力

 もう一つの注目すべき動きは、今年開催された電子機器の見本市「CES」で、インテルを中心としたプロセッサーメーカーが、「Performance per watt(パフォーマンス・パー・ワット)」をテーマに掲げ、エネルギー消費効率を重視する流れに転換したことです。これによりSaaSを開発・利用するパソコンのバッテリーパフォーマンスが劇的に向上すると見込まれています。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus