Fromモーニングピッチ

超高齢化社会の必然 ケアテックベンチャーは最先端技術で課題解決に挑む (1/2ページ)

前出忠彦
前出忠彦

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は高齢者の生活や介護現場を支える「Care Tech(ケアテック)」です。

 テーマ概観を説明するのは前出忠彦です。大企業とスタートアップの協業推進に携わっています。脳こうそくで倒れた祖母を10年間にわたり、母を中心に家族介護をしていた経験を踏まえ、今回の特集を担当することになりました。

 市場は拡大の一途

 介護業界は卵のような構造をしています。黄身の部分が居宅介護支援や地域密着型サービスなどの公的保険サービスとすれば、周りの白身は運動や食、予防といったヘルスケアといわれる公的保険外サービスに当たります。それが超高齢化社会という「お皿」に載っている構図を想像してみてください。

 続いて仕組みです。公的保険サービスは基本的に自己負担が10%で、残りの90%は公的介護保険で賄われる仕組みになっていますが、このサービスの報酬は予めサービスごとに決められています。このため介護事業の経営は、定期的に見直される介護報酬の影響を大きく受けます。

 同サービスの市場規模は右肩上がりを続けています。サービスが導入された2000年は3兆6000億円でしたが今や10兆円を超え、これに伴い保険料の負担額も増えています。

 深刻な介護人材不足

 公的介護保険外サービス市場も順調に成長しており、経済産業省は25年の市場規模が16年比で32%増の33兆1000億円程度まで拡大するとみています。とくにフィットネスやトレーニング機器など、高齢者の運動量を高めるサービスの伸びが期待されています。

 一方で深刻な社会課題があります。支え手である介護人材の不足です。需給ギャップは拡大し続け、2035年には68万人分の介護職員の労働力不足が予測されています。このため要介護や、その予備軍で心身の活力が低下する「フレイル」といった状態にならないようにするため、予防サービスの拡充が社会として求められています。

 さりげない見守りデバイス

 ここでケアテックを巡る最近のトレンドを見てみましょう。大きく3つに分けられます。

 まず「高齢者の運動量の向上と外出を促すパーソナルモビリティ」。ウエアラブルタイプの時計端末を活用したトレーニングや、VR(仮想現実)によるリハビリ治療機器、電動タイプの車いすなど、さまざまなサービス・商品が登場しています。次に「日常生活に溶け込む、さりげない見守りデバイス」としては、テレビや冷蔵庫、ベッド、電気の使用量などで高齢者や要介護者を見守るというサービスが相次いで登場しています。3つ目が「労働力不足が深刻な介護現場の業務支援AI、介助ロボット」でケアプランの作成支援を行う人工知能(AI)や、実際に介助を行うロボットなどが活躍しています。

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