Fromモーニングピッチ

社会課題への感度抜群 U25ベンチャーがアフターコロナの日本を変える

會田幸男

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は25歳以下の起業家を対象にした「U(アンダー)25起業家」特集で、テーマ概観を説明するのはNextCore事業部新規事業ユニット長の會田幸男です。起業家を支援するASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)のプロジェクトマネージャーを務めています。

 低くなった起業のハードル

 米国だけでなく日本でも若手の起業家の活躍は目覚ましく、雑誌のForbes JAPNが特集した「次世代を担う30歳未満の30人の日本人」では、そのうちの13人が起業家でした。

 活躍する背景はインターネットやスマートフォンの普及に加え、若者のITリテラシーが向上したことで、起業のハードルが低くなった点です。また、大学機関で人工知能(AI)の授業が広がっていることも要因のひとつです。

 代表的な若手起業家のひとりが、Gunosy(グノシー)の創業者である福島良典氏。東大大学院の修士2年生の時に設立し、2015年4月に東証マザーズに上場して、17年12月に東証1部への市場変更を果たしました。

 単位を落とさない時間割を組めるという理由により、大学生の間で人気が高い時間割共有アプリ「すごい時間割」を開発した鶴田浩之氏が起業したのは20歳の時です。事業は大きく成長してリクルートキャリアに売却されました。

 支援プログラムも活発化

 国・自治体・民間企業による若手起業家の支援プログラムも相次いでいます。小中学校の起業家教育をベンチャーキャピタル(VC)と共同で支援する動きがあるほか、兵庫県は若手起業家に向けた助成金制度を導入しています。また、京都府では育成から事業支援と若手企業に対する包括的支援サービスを提供しています。民間ではアクセラレーションプログラムを実施する動きが活発です。

 ここで「アンダー25」に相当する国内外の起業家が立ち上げたサービスを紹介します。

 首都圏で地方企業を支える

 首都圏で働く人に地方企業の仕事を紹介する「ともるい」を展開する新潟大発ベンチャーがRiparia(リペリア)です。複業や隙間時間の活用として会社を辞めずに、地方企業と共にプロジェクト単位で仕事をすることが可能なサービスです。

 SNS投稿で店から感謝

 Follop(フォロップ、東京都渋谷区)が提供しているのは、SNSユーザーとお店をつなぐマーケティングプラットフォームサービスです。ユーザーは同社に登録された店舗に行き、写真を撮影して自分のSNSに投稿すれば、フォロワー数などに応じてアプリ内のウォレットにキャッシュバックされる仕組みです。

 持ち帰り特化の注文アプリ

 海外の事例を見ますと、COVID-19によって注目されているのが、米Snackpass(スナックパス)による持ち帰りに特化した注文アプリです。行列に並ぶことなく料理を注文することができ、アプリから事前決済できるテイクアウト注文サービスで、予約によってクーポンを獲得し友達への贈答を行える機能が備わっています。

 英国で誕生したモバイルバッテリーのシェアリングサービスは、専用アプリをインストールすると現在地周辺にある貸出スポットを検索でき、スマートフォンからQRコードを読み込むことによって利用できます。

 25歳以下の起業家は世の中の課題をとらえる感度が非常に高いので、こうしたサービスに対する需要が順調に拡大していると思います。本日は5人の起業家の立ち上げた事業を紹介します。

 オンライン授業を効率化

 Saola(東京都渋谷区)は在留外国人を対象にした日本語教育機関向けのオンライン学習プラットフォームを提供しています。

 COVID-19によってオンライン授業が増える一方で、管理が複雑になっていることを踏まえ、教育フローを事前準備や授業、面接など5つに分けた上で、一括して管理できるようにしました。これによって業務の効率化を図り、各生徒の学習や人間関係などに対する満足度を可視化します。

 オンライン上の入社試験

 HRport(東京都渋谷区)は「Work Samples」というオンライン上の実践型入社試験サービスを提供しています。各業界・業種ごとにオリジナルで問題を設計し、受講者がオンラインで実際に起こりうる課題について回答し、その企業が評価します。書類選考の段階で応募者の適性を的確に判断することができ、選考過程の削減にもつながります。年間の応募者数が1000人を超えるような大手企業を主要ターゲットとしています。

 店舗の売り場づくりをサポート

 コンビニエンスストアやスーパーの売り場づくりを効率的に行えるようにサポートするのが、LAMILA(東京都文京区)のサービス「POSTIO」です。本部が画像などを使って陳列指示書を店舗ごとに作成し配信、その指示に従って店舗は商品を並べていきます。陳列後は売り場の状況を写真やコメントで本部に報告しフィードバックを受けるなど、コミュニケーションを効率的に行うことで売り上げ増につなげます。

 若者コンサルで流行の要因を把握

 ネオレア(東京都渋谷区)の戎光璃(えびす・ひかり)社長が高校生の時には女子高生フォトグラファーとして活躍していました。同社では「女子大生目線で私たちができること」といった観点に基づく、若者向けサービスの企画やSNSの運用に携わっています。とくに力を入れているのが企業向けの「若者コンサル」です。これを活用すると何が流行しているのかという側面だけではなく、「なぜ流行しているのか」を把握でき、マーケティングの強化につながるからです。

 ユーザーの体調に合ったサプリ

 iHack(東京都渋谷区)は医師や専門家集団と共に独自のサプリメントを開発し、オンライン上でユーザーの睡眠時間や食事、体調などを診断することで、そのユーザーに合った5種類のサプリメントを提案しています。独自開発のサプリメントは医学論文ベースで処方しており、エビデンスも開示しています。中長期的にはサプリメントを核にして睡眠やフィットネスといったヘルスケア領域の事業も展開する考えです。

 COVID-19を契機にデジタルトランスフォーメーション(DX)分野を中心に新しいサービスが続々と登場しています。その原動力は感度や柔軟な発想であり、U25起業家が活躍する場はさらに広がりそうです。

グロービス経営大学院卒。2010年三菱UFJ信託銀行入社、2017年7月デロイトトーマツベンチャーサポート入社。東京都主催のアクセラレーションプログラムプロジェクトマネージャーを担いシード・アーリー期のベンチャー企業の支援に注力。直近では、同社の新規事業であるmeetup Sessionを立ち上げる等の自社の新規事業の立上げにも注力。専門領域は物流。

【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら