ビジネストラブル撃退道

日曜夜“サザエさん症候群”が起きる根本原因 仕事とプライベートの線引きは必要か

中川淳一郎
中川淳一郎

 「サザエさん症候群」という言葉があります。これは、日曜日の夕方になると「明日、月曜日から仕事か……」と落ち込んだり、気分が“どよーん”とすることを指しますが、実はこれを克服する方法があります。

“サザエさん症候群”への処方箋

 かなり逆説的かつ単純なやり方ですが、それは「土日も仕事をする」というものです。

 「そうしたら休むことさえできないじゃないか!」「ブラック労働を押し付けるのか!」。そんな声も聞こえてきそうですが、そうではなく、私が言いたいのは週末と週明けの意識のギャップをいかに縮めるかが重要であるということです。

 「安息日」という考えはキリスト教的な発想であり、元々農民が多かった日本人にとって「土日は田んぼや畑の様子を見ないでいい」などということは当然なく、昔は日々仕事の連続でした。「オンとオフ」「プライベートと仕事」といった線引きはありますが、これを明確に切り分けているからこそ、日曜日の終わりや、月曜日の出勤前に絶望的な気持ちになるのです。これは「安息日」に近い。

 私の場合、会社員時代は休日出勤が当たり前、フリーランスになってからも休みなんてほぼありませんでした。特に2006年にネットニュースの編集業務を始めて以降は、年間の労働日数364日という状況。当然、土日も休みがないため、友人と旅行に行っても皆と動きだす前、ホテルの部屋で朝5時に起きて仕事をしたり、移動中の車の中などで編集の仕事をしていました。

 今年1月31日をもって、これら編集業務からは撤退し、穏やかな日々を送っていますが、相変わらず土日も執筆やその他発注いただいた仕事はしています。ただ、労働者人生として24年間、曜日関係なく仕事をしてきた身からすれば、土日は「電話等は一切ないため、仕事量が激減する日」といった感覚になるのです。

 土日の労働時間は2時間半程度だったりもしたわけで、1日のうちのその程度であれば苦痛はありません。むしろ、この日に仕事をすることによって他の日が少し楽になるわけです。そう考えると、「オンとオフ」「プライベートと仕事」みたいな明確な切り分けをする発想にはならなくなります。

 もちろん、明確に「平日9時~17時」といった形で労働時間が区切られている方からすれば、この考えは受け入れがたいでしょう。ただ、私はこれを受け入れてしまった結果、別に日曜日の夕方~月曜日の朝を“どよーん”とした気持ちにならないで済んでいます。

「行動は常に仕事に直結」という意識

 仕事はすべて自分の成長と収入にがるものと捉えています。加えて、土日の行楽地の人々の様子やら、そこで発生していることは編集者・ライターとしてはネタになるため、常に仕事をしている感覚でした。それこそ「最近〇〇県がアツい!」とか「コロナで実は儲かっている業種」などは、土日だろうがネタを獲得することができます。

 私はこれらを文章という形で発表し、カネを稼ぎました。しかし、私のようなフリーランスの文筆業以外であっても、仕事人たるもの別に平日の定時以外でも、その後の居酒屋やバーでの時間、休日の行楽地、テレビで見たものなど、なんでもビジネスにつなげることが可能なわけです。

「社会人たるもの、常にビジネスと向き合っている」という状態であるのに「オンとオフ」「仕事とプライベート」を分けることが大事、という価値観を持ってしまうことによって「サザエさん症候群」が引き起こされるのです。

 まぁ、私が異常なのかもしれませんが、本当に「サザエさん症候群」「月曜日恐怖症」という言葉の意味が分からない。「ワーカホリック」や「ブラック労働」などと言われるかもしれませんが、「平日の定時しか仕事をしません」という人よりは、「私の行動は常に仕事に直結している」と考える人の方が成功すると私は思います。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら

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