2017年にヤマト運輸がアマゾンに対して行った値上げによって、アマゾンの荷物の取扱い業者が大きく変わったことはニュースになりましたね。当初7割近かったヤマトのシェアが3割弱へと減ったと言われています。代わりを担っている企業といえば、佐川急便などの名前を思い浮かべるかもしれませんが、現状はそうではありません。
一部のアマゾンユーザーは最近お気づきだと思いますが、「名もなき」配達業者が担っています。物流大手や地域限定の中堅・中小物流会社に加え、個人ドライバーに配送を直接委託しているのです。簡単に言えば、荷物配達版のUber(ウーバー)です。
配送用の車両さえ用意できれば、スマホアプリによって配送案件を受注できるのです。コロナでUber Eatsの需要が増え、それに伴い配達員が増えたというニュースは目にしたかと思いますが、それはネット販売の世界でも同じことが起きています。そして、こちらは既存業者が存在する点が大きな注目が必要なところなのです。(【関連】アマゾン、委託配送員1万人を突破)
「拒否反応」はローエンド型に付き物
「アマゾンフレックス」と呼ばれるこの新しいシステムによる配送は、少し検索をすれば、ネット上には「配達が雑」「指定時間に来なかった」などのマイナス評価が目立ちます。この点はUberやUber Eatsに対する世間の反応に非常によく似ています。
すでにタクシーや自社配送の出前が存在していましたので、それらと比較すると個人業者の質の甘さが目に付いたのでしょう。一種の拒否反応のような評価が多いのです。
今回確認したいのは「ローエンド型の破壊的イノベーション」です。つまり、既存のサービスに対して質は低いけれども、安さなどの理由で顧客を奪い取っていくイノベーションです。
アマゾンフレックスはたしかに既存の大手業者と比べて質が低いかもしれませんが、値段の安さ、そして何と言ってもアマゾン自身の便利さによって使われ続けています。単純に、高コストのヤマトから「自前の低コストの配送システム」へと切り替えたということです。
ここで、ヤマトは質の高さでシェアを奪い返すことができるでしょうか? そこが難しく、徐々に破壊していくのがローエンド型の破壊的イノベーションです。
「質の悪い」アマゾンフレックスの精度がおのずと高まるワケ
質が悪いと言われながらもスタートしているアマゾンフレックスですが、それでも大量の荷物は存在します。つまり、アマゾンフレックスは自らの仕事の質を高めるのに一番必要な「目の前の仕事」が存在するのです。大量の仕事をこなしていくうちに、経験により仕事の精度が高まっていきます。また、評価制度により質の良い業者が残っていくのです。
この大量の仕事と評価制度によりいつのまにか、そして教育予算を大量にかけることなく一気に質を向上させ、いつのまにか既存業者を超えていくでしょう。