ミラノの王宮で開催されている美術展覧会に出かけた。1500-1600年代の女性画家の作品展だ。あの時代の画家といえば男性。相場がそう決まっていると思っていたのは無知のためだった。人々がこの事実に気づきはじめたのは、この数十年のことである。
男性画家の奥さんや貴族の家庭の娘など、あの当時であっても、女性が描く側にまわる機会はあったのである。例えば、娘たちは、音楽、舞踏、文学といった領域と並び絵を描くことが教養の一つだった。あるいは修道女も絵を描いていた。
今回、130点以上の作品を眺めながら思った。仮にこの展覧会のタイトルに「女性」が謳われておらず、作家名も隠されていたら、これらの絵画を女性の手によるものであると認識したであろうか、と。
女性の作品だと知っているから、男性とは違う女性らしい描き方だと思ってしまう自分がいる。あるいは、女性は男性がこれより100-200年後に描いた絵の先をいったのではないかと思ってしまう。以下はエリザベッタ・シラーニの1663年の作品だ。
ぼくは美術史の素人で同時代の男性画家と比較して語れないのだが、「あれっ、こういうのが1600年代の半ばにあったのだ」と瞬時に思った。
エリザベッタ・マルキオーニの17世紀末の以下の作品にみるように、こんなに花に囲まれた宗教的テーマの絵が、男性画家による作品であるのだろうかとも思った。
ぼくは、他をよく知らない。早とちりをしたかもしれない。先入観によるのか。疑い出すと殆どきりがない。