今日から使えるロジカルシンキング

テスラ株を4000億円で売却したパナソニックの判断は「論理的だ」といえるか?

苅野進
苅野進

 6月25日にパナソニックが所有していたアメリカの電気自動車メーカー、テスラの全株式を売却したと発表しました。24億円で購入して、4000億円ほどで売却したそうです。パナソニックは売り上げが7兆円超、営業利益が3000億円ほどの企業ですから、結構大きなインパクトですね。

 パナソニックはこの10年ほど「電池」に注力していました。みなさんにも馴染みがある充電式の家庭用電池だけでなく、テスラの電気自動車を動かせる高性能な電池技術を持っているので、この分野を軸に伸びていくのではないかと社内外で考えられていました。色々な状況を鑑みての判断だと思いますが、みなさんはこの判断を「論理的だ」と判断されますか?

 ちなみに、ソフトバンクグループは2000年に中国のアリババに20億円を投資して、2014年の上場の時点で8兆円の含み益となったと報じられました。

タラレバ論の中で迫られる数億円の判断

  • 「パナソニックはソフトバンクのように、さらに20倍になるまで待てなかったのか?」
  • 「いや、4000億円の確保は十分だ。良い判断だ」

 パナソニックのこの判断の評価は数年後には固まるでしょうが、ビジネスの現場では「今」判断しなくてはいけません。「未来は確実ではない」という状況のなかで、様々な選択肢を洗い出して、「論理的だ」という判断をして実行するのです。

 答えのあるテキストの問題などでは、「これが一番妥当だ!」といった感じで「論理的な判断」をすることは可能かもしれません。しかし、未来の数千億円の判断となるとかなり難しくなります。

  • 「~という理由で今が一番高いので売るべき」
  • 「~という理由で上がるはずなので待つべき」
  • 「今4000億円を確保すると、もっと良い使い道があるので売るべき」

 いずれも「タラレバ」が含まれている論なのですが、この中から選ぶ必要があるのです。

 今回は、「未来の決断」という計算不可能な行動と「論理性」について考えたいと思います。

未来の判断をするときのチェック項目

 例として、「転職するかどうか?」を考えてみましょう。転職するときのチェック項目を4つ挙げてみます。

〈1〉ゴールは明確か?

 「そもそも何をしたいんだっけ?」というゴールを考えていないことがあります。転職にあたって、「給料を上げたい」「やりたい仕事をしたい」「好きな人と働きたい」「場所を選びたい」など、「何のため」を確認しておく必要があります。

〈2〉副作用はないか?

 自分が満足したとして、思わぬところから副作用が発生することもあります。「転職したらフラれた」など他の利害関係者のことも考えてみましょう。ビジネスでも同様で、思わぬところから横やりが入ったり、失注となってしまったりがあります。

〈3〉前提は共有できているか?

 〈1〉に関連しますが、ゴールは一緒だけど、「そもそもの前提条件」が違っていると、手段の取り方も変わってきます。「経済的に成功できる転職」というゴールは一緒でも「友人に自慢できる企業」という前提が存在することもありますよね。

 「感情的な好み」だけでなく、とりあえず来月の借金を返さなくてはいけないといった「長期的・短期的」という前提条件なども存在します。「来月退任する社長」がリスクを取らなくなるのも「前提の違い」と言えるでしょう。

〈4〉リスクは許容範囲か?

 「すごいボーナスが用意されている」といった上振れに気をとられるだけではいけません、というのは、みなさんなら簡単に理解できると思います。「一か八か」はビジネスではご法度ですよね。しかし、優秀な人でも見積もりをミスしがちなのが、「大数の法則」です。

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