ビジネストラブル撃退道

「出世を諦めきれない…」40代男性が悩みを解消するために必要な“覚悟”とは

中川淳一郎
中川淳一郎

 私が会社を辞めた理由

 私は4年で会社を辞めたが、辞めた理由は「自分が将来出世しないことを明確に把握した」ためである。会社でエレベーターに乗ると、そこに乗ってくるオッサンの誰が役員かは一瞬で把握できた。高いスーツの「役員オーラ」があることに加え、自信たっぷりな「役員表情」「役員立ち」をしているのだ。一方、役員ではないオッサンは自信なさそうに立っていてスーツも安っぽい。自分はこのポジションになることが容易に想像できたため辞めた。

 一方、同世代で会社に残っている非部長の知り合いは「サラリーマン最強!」などと言いながら、日々仕事はきちんとしつつ、子育てや趣味に全力で打ち込んでいる。その姿は実に清々しいし、人生を楽しんでいる感がある。決して出世だけがサラリーマンとしての幸せではないのである。

 そもそも、すべての人は色々なことを諦める人生を送ってきたはずである。大学に入ったら「仮面浪人」が時々いたのではないだろうか。「オレはこんな大学に本当は入るはずではなかった。来年、東大を受けるのだ」なんて言いながら、授業中、東大受験のための勉強をしているヤツが何人かいた。

 授業終了後「ゲーセン行こうぜ~」なんて誘っても「オレはお前らとは違って東大を受けるから勉強をしなくてはならない」なんて言う。だが、夏を過ぎれば「東大なんてどうでもいいや。この大学で案外楽しい」と仮面浪人をやめる。

 だから、冒頭の「出世をしないことは分かっているけど、若干未練もあり、どうすればスパっと割り切って出世を諦められるか? なお、転職をする気はない」という質問に戻ると、「出世しないのもあなたの運命。もうそれを受け入れて、できる限り楽しく生きましょう」というのが答えになる。

 人間それぞれ。人生それぞれ。出世することが人生の成功というわけではない。一元的な価値観はもう捨て去っていい。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら

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