■スポーツ協賛のプライスレスな価値をどう評価するか
実は選手の活躍だけでなく、日本企業の世界でのスポーツイベント協賛もまだまだ活発で心強い限りです。
USLPGA全米女子ツアーでは、5大メジャー大会の一角「ANAインスピレーション」を2015年以来ANAがスポンサードしており、今年も4月初旬に無観客と言え無事大会が開催されました。逆に言えば、航空会社にとってこんな厳しい時代にさえ簡単には休止しない覚悟が必要な取り組みがスポーツ協賛だとも言えます。
例えば多くのスポーツ文化への協賛活動を行ってきたリコーは「全英女子オープン」渋野日向子選手優勝の前年に10年以上にわたる冠協賛を終了しており、その巡り合わせは関係者にとって残念だったに違いありません。
一方、今に続く男子のソニー・オープン・イン・ハワイは世界企業としてのソニーをバックアップする名刺代わりとしての役割を存分に果たしてきたように思います。
スポーツ大会だけが持つ、感動と名声いう唯一無二の価値。それを企業活動に取り入れることには他で得られない効果があることは間違いありません。
しかしながら、提案する側の立場から言えば、最近はすべてに接触効率、露出効率で判断しようとする風潮が強すぎるように感じています。もちろん科学的マーケティング視点は当然欠くべからずですが、露出価値のシミュレーションは計算の前提で大きく振れ幅があることもまた事実なのです。プロの立場から言えば大きくしようと思えばいくらでも大きくできる数字です。より本質的にはある程度の数字的根拠を確認しながらも、無形の価値に対して目利きをする慧眼も欠かせないというのが正直なところです。
企業活動そのものに内包するような長期的視点で、日本でもマスターズを超えるような、世界的スポーツ大会を育て、企業自体も成長、ブランド価値を高めることにチャレンジする企業がぜひ増えて欲しいと願っています。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら