仕事でも多発する「お任せします」の逃げ
これはビジネスの世界でも多々発生するのではないだろうか。私の場合、「PRの専門家」ということで広告会社の営業と一緒に仕事をすることは多かった。クライアントに対する責任者はその営業・A氏である。A氏は「PRの専門家・中川氏を連れてきました」と言い、その後「その場にいるだけ」といったこともある。
事前の打ち合わせで私は大抵「これしかないです!」と渾身の1つの案だけを持って行く。だが、「クライアント、けっこうビビりなので、松竹梅の3つを作ってもらえますか?」と言われ、プレゼン当日は3つ持って行くこととなる。大抵採用されるのは「竹」になるのだが、A氏は「本当は最初に中川さんが持ってきたものが良かったんですけどね」なんてプレゼン後に言うのである。
実際問題として、A氏だって散々PRをやってきたのだから自分の頭で企画は考えられる。私はPRの専門家として「社会の空気」「こんな記事のアウトプットがイメージできる」「どのメディアがこの企画を気に入るか」といった観点から作る。A氏の場合は「クライアント企業らしい企画」や「クライアントから採用されやすい企画」を熟知しているだけに、そこの調整をキチンとしてほしいのである。そう考えると、あくまでもこのクライアントが相手の場合、A氏の方がPRパーソンとして私よりも優秀かもしれないのだ。
それなのに「あとはPRの専門家・中川さんにお任せします」と逃げてしまう。この様が西村氏や菅氏と似ているのである。尾身氏が会見で時々「えっ? 今私に振るのですか?」のように困惑することがあるが、まさに上記のようなPRの仕事における私の立場である。
これからも西村氏の会見や国会での発言は注視した方がいい。「仕事上やってはいけないこと」が随所に見られ、良い反面教師になるだろう。仕事人たるもの、「私はこれが正しいと思う!」とガツンと言い放ち、それで周囲を動かす。それで失敗した場合は潔く失敗を認め、降格なり辞職すればいいのである。そして、社会はその人の再登板を認めるようになればいい。
事なかれ主義がすっかり染み付いたから日本の現在はもう破滅的にダサい状態になっている。ワクチン開発もできず、獲得もできず、家電業界は中国・台湾・韓国の後塵を拝している。どうしてこうなった……。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら