社長を目指す方程式

命令もダメ出しもNG?“イマドキ若手”を上手に導く令和のトリセツ

井上和幸
井上和幸

 意外にも職場外での繋がりを求めている!?

 統計数理研究所の国民性調査によれば、イマドキ若手が職場に求めることは「サークル的、家庭的な雰囲気の職場」「面倒見の良い上司」「上司と仕事以外の付き合い」が、以前に比べてそれぞれグンとスコアアップしているそうです。意外な印象を持つ読者上司の方も多いのではないでしょうか。いま皆さんの近くにいる若手社員たちは、私たちが思っているよりもはるかに「関係性欲求」が強いのです。

 明治安田生命が毎年発表している「新入社員が選ぶ理想の上司」ランキング。今年(2021年)は男性の1位がウッチャン(内村光良)、女性の1位が水ト麻美アナでした。これを見ても、優しくて、暖かい、友達的なイメージの人物が好まれていることが分かりますね。

 心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンが構築したモチベーション理論に、「自己決定理論(Self Determination Theory)」があります。これによると、人は「3つの基本的欲求」(=自律性欲求、有能感欲求、関係性欲求)を満たすことでモチベーションが高まるのだとされています。

 ここで定義された「関係性欲求」とは、関係を築く、絆を深めるなどの他者と関係を持ちたいという欲求や、集団に所属したい、誰かの役に立ちたいなどの社会的な欲求で、長期的にモチベーションを維持するために必要な条件とされています。他者とつながり、自分が認められているという安心感がモチベーションを長期的に安定させるのです。

 考えてみますと、いまの若手(20代)が生まれて育ってきた日本は「失われた30年」と言われた期間で、経済的な成長実感を得難く、先も見通しにくい中で、昭和のような家族的な繋がりが希薄化し続けてきた社会でした。

 だからこそ、自分が属する会社・職場に対して、上の世代以上に関係性欲求への渇望が深層心理的にあるのかもしれません。

 あらゆるコミュニケーションを対面ではなく(電話ですらなく!)LINEで済ませる世代であるがゆえに、会社や上司にベタベタされたり巻き込まれるのは嫌だ。でも、自分のことを仕事上のみならず気にかけてくれないと嫌なのです。

 過干渉にならないように気をつけたうえで、「見ているよ」「気にかけているよ」「頑張っているのを認めているよ」という情報発信を上司側がしていることが大事なのですね。

 彼らの仕事の把握、一定レベルでのプライベートな情報の把握、そしてなによりも、交流や意見交換の機会を持つことが、あなたのチームの若手が「チームの一員」となってくれるための必要条件です。

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