■「素っ気なさ」もブランディングのうち
そう考えると、「スシロー」についてブランディングのテクニカルを語ってもあまり意味がないように感じます。生活者は「回転寿司」という業態をすでに支持しています。「のれん」について言えば、そのみんなが好きな「回転寿司」で一等美味しくて、安いお店という識別さえできれば事足りるのかもしれません。
かつてそば屋は「藪」か「更科」「砂場」、角にある”めし屋”ならば「かどや」とのれん分けの関係上も色々な店名は存在しなかったわけですが、人気店は自ずとはっきりしていたに違いありません。
「スシロー」は大阪発祥とのことですが、赤丸にスミ文字で「スシロー」だけの看板を眺めていると「しゃらくさいことは嫌いだぜ」と江戸前寿司を扱う中での、江戸気質さえ感じてしまうのです。
さて日曜日の昼下がりでもあり、隣の席では夜にできない「お疲れ様」を、ささやかに行う地元のお仲間のグループが結構な数のジョッキを空けていました。
「スシロー」は都心部の出店も加速させるとのこと(スシロー、くら寿司はコロナ禍でも加速 業界2強が都心に出店攻勢)。オフィス街であればチョイ飲み需要も受け止めながらのさらなる進化にも期待したいところです。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら