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「帝国ホテル」建て替え 次世代の「和魂洋才」を期待

秋月涼佑
秋月涼佑

 2月1日突然のように発表された、帝国ホテル東京をサービスアパートメントとして1ヶ月36万円で利用できるプランは、全931室のうち99室を住むように使ってもらおうという趣旨とのことでしたが、予約初日あっという間に完売してしまいました。

 在宅勤務やリモートワークにややマンネリを感じている層にも刺さったに違いありませんが、何と言っても「帝国ホテル」のブランド力からすれば破格と感じる料金設定が強烈の一言で、しかも専属サービスアテンダント、駐車場、フィットネスセンター、プール、サウナなど、至れり尽くせりのパッケージ内容を考えれば多くの人がこの機会に一度そんな1ヶ月を試してみたいと考えたのは当然かもしれません。

 一方の帝国ホテルとしても、新型コロナウイルス流行によるダメージは深刻極まるものであるに違いなく2021年度3月期(連結)の当期純利益が148億円の赤字になり、そもそも売上高が前年半減以下の217億円であることを考えると、未曾有の状況と言うべきに違いありません。特に、宴会・レストラン事業での売上が過半数を占めるならではの特性を考えれば、さすがの帝国ホテルと言っても自粛の影響は死活的であって当然です。

 航空業界同様、空室でも運営コストの固定費を劇的に下げられない産業特性を考えれば、値段を下げて客室を販売することが、館内での他売上も期待できるわけですから短期的な収益面では合理的です。とは言え、一度下げてしまった客室価格がそのままホテルブランド自体のグレード認識になってしまい、簡単に販売価格をもとに戻すことが難しいことを熟知しているのもまた帝国ホテルのスタッフですから、まさにギリギリの決断だろうと察せずにはおれません。

 サービスアパートメント方式という通常の客室販売と一線を画す販売方式、そして何より今回正式に「帝国ホテル 東京」の全面建て替えが発表されたことで、新築時に料金設定を仕切り直せることを前提にした例外的な施策と合点がいきました。(築50年の帝国ホテル東京を建て替え 完成は2030年以降)

 それにしても、そこまでの苦境を応援するような気持ちでプランに申し込んだ人も少なからずいたのではないでしょうか。

■最大手デベロッパーと最高峰ホテルブランドの好相性

 確かに近接する立地に日比谷ミッドタウンをすでにオープンさせている三井不動産が、さらに帝国ホテル周辺の日比谷・内幸町一帯の大規模再開発を計画しているとの下馬評はありました。三井不動産は2007年には帝国ホテル株式33.16%を取得し資本参加するなど布石を打ってきました。

 ただしその目的は単に再開発のための権益確保という視点よりも、唯一無二の「帝国ホテル」ブランドを活用する意図があることは、出資時のプレスリリースに「両社は、帝国ホテルのブランド力やホテル運営ノウハウを活用する」と明記されてもいます。最大手デベロッパーと日本最高峰のホテルブランドの相性は悪い訳がなかろうと思われます。

 それにしても帝国ホテルです。日本の近代化、欧化政策実践の場として牽引した当時の国家事業「鹿鳴館」の精神を引き継ぐかたちで、鹿鳴館隣接地に井上馨が渋沢栄一と大倉喜八郎の2人を口説いて1890年つまり明治23年に開業した歴史、日本の政財界の言わば公式ホテル、迎賓館として明治以降日本の発展を見守ってきた存在は唯一無二という他ありません。

 初代の建物が焼失するなど苦難の中で、世界的建築家フランク・ロイド・ライト設計の1923年竣工歴史的な二代目、その後日本での万博に向けて1970年現在の新本館、1983年当時オフィスフロア等も備える新機軸としてオープンしたインペリアル・タワー(現帝国ホテルタワー)と逐次その時代最高峰、最先端の知恵と労力が投入されてきました。

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