地味だが完璧な提案
本当の定規も14年に優秀賞を受賞していた。制作したデザイナーの坂井浩秋さんは「一般的な定規のように『太さがある線』ではなく、幾何学の定義でいうところの線=『太さがない線』で目盛りを表現できれば、長さを計る道具という定規の本質により近づくことができると考えました」と狙いを述べている。
同年に審査員を務めたクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんは「デザインの提案としては地味だと思われるかもしれないが、完璧な提案であることは間違いない」、デザインエンジニアの田川欣哉さんも「0.01センチメートルのズレはデザイナーにとって致命的であり、その点を解決しようと試みたこの定規は優れています」とそれぞれ激賞した。
確かに、紙とペンがデジタル機器に置き換えられ、AR(拡張現実)技術の発達によってスマートフォンが定規にもメジャーにもなるアプリが普及していても、緻密な作業では“プロ仕様”のアナログ文具に軍配が上がるのは間違いないだろう。ヒット商品に、そして文具とデザインの業界を盛り上げる要因になってほしいと、本当の定規にかかる期待の大きさは“測り”知れない。
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