でも時代はまったく変わり、今やテレビさえほとんど見ない人とて少なからず存在する時代となり、もはやマスメディアを通じての共通体験が成立しにくい、マスなき時代と言えるところまできたように思います。最近よく耳にする「分断」という事象も情報接触の分散化がその背景にあるのです。
そんな時代だからこそ、逆に今や国民食とも言える「ラーメン」は多くの人それぞれの体験やこだわりと同時に共通体験を投影する対象として、その存在感が際立ちます。
例えばセブンイレブンでもはや人気が定番化した「蒙古タンメン中本」なども、そのユニーク過ぎるオリジナリティが一つのマスコンテンツのように情報化したブランドを確立しています。
どんな小さな地方の個人店であってもコンビニ流通で全国区の評判をとればロイヤリティ収入も全国的知名度も期待できる夢のある時代、一方で、それはお店の味に少しでも失望感があれば、「こんなものか」と全国区で評価されてしまうブランド陳腐化と背中合わせの怖い時代とも言えるかもしれません。
それにしても、大企業、大メーカーの外側から名乗りを上げるツワモノは増えていくに違いなく、生活者参加型のエンタメ性あふれる一番勝負を今後も楽しみにしたいと思います。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら