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滑舌よくスラスラ、朴訥で丁寧… 「話し方」のヒエラルキーなど存在しない

安西洋之
安西洋之

 デザインウィーク京都という2月に行う毎年恒例のイベントがある。京都にある企業の資産を一般の人たちにオープンにする。例えば、工芸製品などの生産現場を職人の顔や声と共に知ってもらう。そうした交流によって、新たなビジネスの可能性を発掘していくのが目的だ。(デザインウィーク京都

 今年はリアルの見学とオンラインライブの併用であった。このイベントを主宰している北林功さんが、次のようなことを話していた。

 「工房の職人さんたちは全般的に話下手と思われがちで、本人たちもそう思い込んでいる節があります。それで商売が広がりにくい、と。でも、6年間活動してきて、これは先入観に過ぎないと分かりました。デザインウィーク期間中、さまざまな人が毎日訪れますから、職人さんたちは繰り返し自分たちのことを話し、質問を受けながら答え方を工夫していきます。1週間もすると、抜群にプレゼンが上手くなるのですよ」

 職人さんは話下手だから、それをシステムとしてどうカバーするかというアイデアがよく出る。営業が得意な人との二人三脚であれば理想であるが、いつもそのような形態がとれるわけでもない。もっと言えば、それが理想とも言い切れない。

 ここに一つ目を向けないといけない点がある。

 朴訥で丁寧な語り口こそが聞く人の心に響くことが大いにある、という現実である。滑舌よく論理的にスラスラと話す内容は最初、耳に抵抗なく入ってくる。しかし、少し時間がたち何度か聞いていると飽きるのだ。

 一つ一つの質問に「待っていました!」とばかりに即答するのではなく、じっくりと考えながら言葉を絞り出していく姿に好感がもてる。同時に、ゆっくりと言葉を探すプロセスを共有するからこそ、聞く人の頭のなかにも言葉のひとつひとつがじょじょに浸透していく。

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