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日本と欧・米、記事や書籍「出だし」の違い 「偉人の名言」引用の是非

安西洋之
安西洋之

 最近、日本のソーシャルメディアを眺めていて(このごろは、音声メディアのClubhouseで「聴く」こともあるが)気になることがある。それは発言に歴史上有名な人の言葉の引用が多いことだ。以前、この連載で書いた「知的巨人」との表現の多用と関係があるのだろうか?と、ぼくは考え始めた。あるいは、そもそも引用の多さは、ぼくの思い違いだろうか?(「知的巨人」との表現の多用)

 アカデミックな論文であれば、先行研究を示すものとして過去の論文を紹介するのが手順である。だが、そうではない世界において、これほどに書名や引用を指し示すようになってきた背景はどこにあるのだろう。

 振り返ってみれば、日本の一般書籍では参考文献も掲示しない習慣が長く続いてきた。それに関する議論もあった。学術論文でなくても、他人の考え方を援用するならば、元ネタを見せるのがマナーではないか、と。

 一方で書名を掲出すると「私はこんなに本を読んでいる」と自慢するようで嫌味だとの批判もあった。的外れなコメントとも思えるが、出版社の編集者が売り上げを気にして敷居の高くない雰囲気に拘ることもあるだろう。

 誰かの言葉を自分が考えたように使用するよりも、誰の言葉と明示する方が誠実であるし、何よりも読者もその先の探求がやりやすい。その意味で引用や参考文献リストは親切である。

 引用の多用は、「教養主義」の流行もあるだろうが、今までの文化に変化が出てくる兆候なのだろうか。

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