ローカリゼーションマップ

「子どもにはすべてがある」 日本とイタリア「赤ん坊」観の違い

安西洋之
安西洋之

 前世紀は、工業製品の量産を効率よく回すに品質トラブルをできるだけ抑え、歩留まりを良くすることが重視された。市場に均一の品質を提供することが何よりも優先された。工程のなかで人の手が入り、品質上のバラつきがでるのは劣等であると見なされる。

 今世紀においても、大量に生産する工業製品においては同じ価値観が継続している。ただし、大量生産的な見方が本来適用すべきではない広い範囲にまで及んでいたとの反省が、この10数年、盛んにおこなわれる。それがこの数年の職人技の再評価にも繋がっている。

 プロセスとしての評価だけでなく、質感においても人肌を感じるような存在の傍にいたいとの欲求にも関わる。

 さて、子育てをこの議論と並べて良いのかどうか、確信がもてない。しかし、並べて論じたい誘惑があることを否定しない。例えば、一度、量産で作った均質的な製品を職人技で作り変えることが可能だろうか? という問いを発してみたい。物理的なプロセスとしてはあり得るかもしれない。ただ、その成果物は魅力的なものであろうか?

 もし、「個性的であれ」を巡る数々の意見をこれになぞらえると、人の尊厳を何と心得ているのかという話になりかねない。心寒いから、文章は一旦、ここで止めておこう。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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