今日から使えるロジカルシンキング

TESLAの安い改良版もつくれず 過度なオリジナル信仰が日本企業をダメにする

苅野進
苅野進

中国TikTokを模倣する米Facebook

 「リール(Reels)」という動画共有機能を米Facebook社がInstagram(インスタグラム)の機能としてグローバルで提供し始めたのは2020年の8月のことです。5カ月を経過してかなりの浸透度です。知られているように、これは中国のByteDance(バイトダンス)という企業が開発したTikTok(ティックトック)の模倣です。TikTokは2018年ごろから爆発的な人気を博した、15秒から1分ほどの短い尺の動画を音楽付きで共有できるSNSです。アメリカから色々難癖をつけられて窮地に追いやられていましたが先行者としてかなりの認知度を得たことは間違いありません。

 じつは、Facebook社がTikTok風の動画共有SNSを発表したのは2回目です。2018年にTikTokの人気を追うように、Lasso(ラッソ)というアプリを発表しました。TikTokとほぼ同じ機能でしたが、それほどダウンロードされずに終わってしまいました。

 日本では、「先進的IT企業」という印象が強いFacebook社ですが、最近は新規事業開発と模倣戦略のバランスで勝負している印象です。

 Instagram内で掲載した写真からそのまま購買ができるシステムも始まっていますが、これも、先行していた中国のWeChat(ウィーチャット)と同じ形になっています。

 WeChatという本当の先行者を真似し、ブラッシュアップさせたアプリによって世界制覇を目指す。これは、かつて日本が大得意にしていた戦略です。日本を代表する「2番手戦略」企業であった松下電子工業は、当時世界最先端だったオランダのフィリップス社の社屋の形状すら真似て、同レベルの製品を素早く出していくことにこだわっていました。

 なんと言われようと、「徹底的に先行者に学び、真似して、超えていく」。古すぎると批判されがちなビジネスモデルですが、我々が「最先端でイノベーティブ」と崇めているFacebook社でもその形を今まさに進めているのです。そして、そもそもFacebook社は世界ではじめてのSNS ではありません。

2番手は「恥ずかしい」?

 「追いつけ、追い越せ」とまとめられがちな2番手戦略は今現在も古びておらず、簡単なものでもありません。最近のビジネス用語としても「TTP(徹底的にパクる)」が流行しています。

 ドイツのインターネット関連企業であるロケットインターネット社は、アメリカと中国以外の国で、アメリカや中国で流行した企業・ビジネスをそのまま展開するということを徹底した企業でした。勢いはなくなりましたが、「ダメなら次へ」と素早く進めていく姿勢で大きな成功を納めたことは間違いありません。

 日本企業もそうですが、勢いがなくなると「2番手」であることが批判になります。「新しいものを生み出していないからだ」とか、「恥ずかしい」とかいうものです。しかし、企業経営として重大な「開発コスト」の観点からは、2番手は不当な戦略などとは言えないでしょう。トヨタですら、他の自動車メーカーの後発・真似としか言えないものを数多く出してきたのです。

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