今年、グローバリゼーション終焉論を目にすることが多かった。これまでもグローバリゼーションの無理はさまざまに批判されてきた。しかし、パンデミックにより長いサプライチェーンが機能しなくなった。インバウンド需要はどこも期待できない。これらの事態に直面し、グローバリゼーションの良し悪しを越え、人はローカルでそれぞれに生きていくしかないとの覚悟が芽生えてきた感がある。
ただし、ローカルを見直す機会が増加したからといって、閉鎖的な見方が肯定されるようになったというわけでもない。インターネットの普及により実現した「世界に繋がる」とのコンセプトは相変わらず支持を受けている。要は日々の生活空間に軸足をおいて考えることが強調されながらも、遠い距離にいる人たちとも交流を図り、可能な限り閉じない姿勢を保とうとしている。
この10年以上、本連載のタイトルにもある「ローカリゼーションマップ」とのプロジェクトでローカルコンテクスト(特にその日常生活)の変化を追ってきたぼくとしては、大河の流れが変わったとしか言いようがない変遷を実感している。
そこで、およそ10年前に書いた本『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』で紹介したパナソニックの白物家電は、その後、どうなのだろうとふと気になった。当時、同社で欧州の白物家電のマーケティングを担当していた斉藤哲志さんに取材し、地域性の高い白物家電のなかでも、特に洗濯機はローカル文化を深く反映している機能製品であることを教えてもらった。
数年前、斉藤さんは欧州から南米に担当が変更になりブラジルに異動した。そして、今春からは日本に戻った。多くの日系白物家電が海外市場から身を引いた今、斉藤さんは日常世界に密着する洗濯機の世界事情を語れる数少ない1人だ。