CAのここだけの話

外資系CA研修は英語ネイティブでもキツイ バッチメイトが何よりの支え

米安加奈
米安加奈

 SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第92回は中東系航空会社で乗務する米安加奈がお送りいたします。

 外資系航空会社は新入社員に対し2カ月間の訓練を実施します。会社の拠点となる国ですぐに海外生活が始まります! 今回は、その外資系航空会社2社の新入社研修を経験した私が、外資系の新人研修の過酷さ、そして研修にまつわる思い出ついてご紹介します。

「音を立てながら蕎麦を箸で食べる」ってどうなの?

 外資系航空会社には、世界中からのたくさんのクラスメイトたちが集まり、当然のことながら、初日のオリエンテーションからすべて英語です。私のときは、ブラジル、チュニジア、イギリス、ブルガリア、ロシア、スロバキア、ポーランド、キルギス、イタリア、ルーマニア、ウクライナ出身の計11カ国から集まった13名のクラスメイトでした。

 3日目までは、会社のオリエンテーションのほか、会社の拠点である中東の文化を習ったり、クラスメイトとお互いの文化の違いについて意見を出し合ったりしました。

 例えば「日本人女性が床に座って、音を立てながら蕎麦を箸で食べる動画」などを見て「自国の文化と違う文化に出会った時どうするか」についてディスカッションします。大きな音を立てて麺をすすることが失礼にあたる国もあります。自分が慣れ親しんだ文化を客観視することが興味深くもあり、日本の文化を伝える担い手としての責任感も感じました。

最大の山場はセイフティ研修

 さて、4日目以降からやっと客室乗務員ならでは、セイフティ、つまり安全面の授業が2週間ほどおこなわれます。

 ここが「一番の山場」と言ってもよいほどの勉強量が要求されます。分厚い参考書を3冊読破し、座学と実技とテストに追われる毎日のスタートでした。ここで初めて航空会社での専門用語などを英語で習っていくので、ネイティブスピーカーですら毎日勉強しないと追いつかないレベルの英語力が必要です。

 主な内容は、機内で火事が起きた時のシチュエーションや場所別の対応の仕方、機体別の緊急着陸パターンやドアの開け閉め、機内の圧が下がった時の対応、 機内が揺れたときの対応、酸素ボンベや消火器やなど様々な機内の中にある道具の使い方や決まり、海に着水したときのサバイバルな生き残り方などここでは書ききれないほどの知識を習得します。

 実技では、座学でならったことを実際に、飛行機のシミュレーターの中で練習やテストを繰り返して覚えます。

機内での救命・メディカル訓練

 さて山場が過ぎたかと思うと、今度は機内での救命の勉強がスタートします。

 年齢別の脈の測り方、AEDの使い方、アナフィラキシーショックへの対応、緊急出産の時の対応、脳梗塞・気絶・発作への対応など、病気の症状や対応の仕方をすべて学びます。ここでも医療専門用語がたくさん登場し、そもそも知識がなかった私は、英語のほか日本語で調べるなど、苦戦してばかりでした。

 地上ではあまり起こらないことでも、環境の違いにより機内では様々な体調の変化が起こりやすくなっています。例えば機内では、地上に比べて4倍酔いやすいとも言われています。そして気圧の影響で気絶しやすいといいます。実際に乗務していて、特に日本人のお客様の中に、「これから海外に行く」というルンルン気分で、いつものようにお酒を飲んで気持ち悪くなってしまい助けを求めにくる方をたくさんお見かけします。

 こうした機内で起こりうるメディカルの知識をたくさん、英語で学んでいきます。

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