元受付嬢CEOの視線

人生は一度きり 受付嬢からCEOになって「得たもの」「失ったもの」

橋本真里子
橋本真里子

 こうすることで、私はきっと起業していなければ味わわなかったであろう、苦労や苦悩を乗り越え、むしろポジティブに捉えられる体質に変わっていったと思います。

想像どおり? 友人・交友関係

 起業して失ったものもあると気づきました。

 プライベートの交友に割く時間は本当に減りました。受付嬢時代は、お誕生日会や飲み会、女子会など様々なものにたくさんお声がけをいただき、参加させていただきました。しかし、起業してからはまずお誘いに応じられなくなってしまいました。そして、きっと周囲の気遣いもあって、お誘いいただく件数も圧倒的に減りましたし、自分からも積極的にそうした機会を作りに行くことはなくなりました。

 一方で、そんな中でも受付嬢時代から仲良くしてもらっている友人や、起業前からの友人など、定期的に会っているメンバーもいます。きっと今の自分にとって、本当に必要な交友関係なんだと思います。私がなかなか先の予定を立てられない時も嫌な顔せず、付き合い続けてくれる友人は自分にとって何歳になっても大切にしたいと思っています。

オフ・お休み…そんな概念はもうない!?

 「完全オフ!」と言う時間は、起業してからは全くないです。「会社が休ませてくれない」と言うわけではありません。物理的にお休みをもらっていたとしても、暇さえあれば社内の連絡ツールを見にいってしまう。ボーッとする時も「あ、そうだ。あの件に対応ができていなかった!」と思い出すと、すぐパソコンやスマホに向かって仕事をしてしまいます。出かけた先でも受付など自分の事業に通じるかもしれないという視点は常に持ち合わせており、会社にはいなくても、精神状態は常に仕事をしているという日々です。

 もちろん夢でも仕事をしています。プレゼンの前日の夢は、必ずと言っていいほどリハーサルをしています(笑)こういった状態をいわゆる「ワーカホリック」と言うのでしょうね。しかし、自分がやりたいことに夢中になれるって幸せだなと思っております。

 こうして文章にしてみると、「起業って相当ハードなんだな」と思われるかもしれません。たしかに、「ハードシングス」な日々です。しかし、今の自分と以前の自分、どちらが好きかと聞かれると、それはやはり今の自分です。起業という道に進み、経営者として成長をさせていただいているという経験は何事にも変えがたい人生の宝だと思っています。失うものもありますが、それすらも「失う」という感覚ではなく「研ぎ澄まされる」と捉えています。

 一度しかない人生。私は日々「生きている実感を味わえて、幸せだな」と思っているあたりが、またもやポジティブ力の賜物だなと感じざるを得ません(笑)

橋本真里子(はしもと・まりこ)
橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
大学卒業後、IT企業を中心に上場企業などで受付業務に従事。受付嬢として11年間、のべ120万人以上を接客。2016年にRECEPTIONIST(旧ディライテッド)を設立。2017年にクラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。2018年以降は日程調整機能「調整アポ」、会議室管理「RECEPTIONIST For Space」など、受付に付随するビジネスのコミュニケーションの一元化を目指すサービスも展開し、導入社数は3000社超。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。アーカイブはこちら

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