朝一で駆けつけたものの顧客企業の重役が大激怒
かつて駆け出しコンサルタント時代に苦い思い出があります。同業他社の顧客から連絡があり、私の会社に乗り換えることを検討しているというオファーをいただきました。その際に顧客は、同業他社について「ミスはしょうがないけど、そこに対して普通の対応ができないってのはありえないよ」という不満を口にしていました。私は、同業他社からの大口顧客の乗り換えという状況に舞い上がっていて、「普通の対応」という相手にとっては契約を切り替えるほどの重要事項について、具体的な基準を確認しなかったのです。
その3カ月後くらいでしょうか。自社が対応していた先方のサイトに大きな不具合があるという連絡を朝一番に受けました。私は上司とともに「相手は常識や礼儀を非常に重視している」と考えて、「すぐにお伺いします!」という返事とともに先方に向かいました。
会議室に通されて、待つこと30分。相手は忙しい企業のCTO(最高技術責任者)です。やっと現れたCTOに対して、私の上司がすぐに立ち上がり「このたびは誠に申し訳ございませんでした!」と90度のお辞儀をしましたが、CTOは「まあまあ、お座りください」と穏やかな対応です。
そして席に着いて再び私の上司が「このたびは私どもの不手際により…」という話を始めると、「それで修復までの時間、今回の原因と根本的な解決策は?」と遮ったのです。それに対して上司が、「それにつきましては担当が対応しておりまして、まとまり次第ご報告いたします。まずはご迷惑をおかけしたお詫びにと思い駆けつけた次第です」と発言した瞬間に、CTOが怒りの表情に変わりました。「ミスで時間を浪費させた上に、解決策も生まれないこのミーティング でさらに時間使わせる気ですか!? 弊社のサービスを修復することを最優先するっていう普通のことを考えられないですか?」と大激怒でした。
「普通」を軽んじられると強い拒否反応
「普通」は人によって、立場によって、時と場合によって変わるものです。そして、明確には表現されることがありません。しかし、人は自分が「普通」と考えているものを軽んじられると非常に強い拒否反応を示すものです。ですから「普通」を注意深く扱わなければ大きなトラブルの元になるという私にとっての大きな教訓になっています。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら