今日から使えるロジカルシンキング

「Google検索で辿り着いた」が最多だから「Googleに広告を出す」の誤解

苅野進
苅野進

 先日、私が経営する学習塾の広報から次のようなグラフを見せられました。

 「学習塾を選ぶのに一番重要なのは、Google検索でヒットすることです。というわけで、Google広告を出したほうがよいです」という話でした。さて、皆さんだったら、この円グラフを見せられてどのような判断をするでしょうか?

 実は、このデータの見せ方はデータ分析やデータに基づいた経営判断で誤った方向に導く可能性があるものとして非常に有名です。

 「インターネット検索を見てきました」

 は、本当の話かもしれません。しかし、皆さんの行動を振り返ってみてください。「友人から良い塾だという話を聞いた」とか「雑誌で記事を読んだ」とか「通りがかりで看板を見た」ことで学習塾を知ったとしたら、次にどのような行動を取りますか? そうです。インターネットで検索をするのです。「つまりインターネット検索を通じて辿り着いた」のは本当の話であっても、「インターネット検索のおかげで、数ある学習塾の中から選び出した」とは言えないのです。

 アンケートは、与えられた選択肢によって結論の見え方が大きく変わってきます。本来は実線で囲まれた部分を選択肢として考え、どこに注力すべきかを考えるべきです。しかし、このデータは点線部分を対象としているのです。もし、ほとんどの人が「雑誌で名前を知って、それからインターネット検索をしてたどり着いた」のであれば、インターネット広告に注力しても良い結果は得られません。「インターネット広告が重要である」と錯覚させることを意図したアンケート設計だと言えるでしょう。

「もれ」や「ダブり」はないか

 例えば、次のような選択肢を考えてみましょう。

Q. 夫の夜の会食について思うことはありますか?

  • A1:子供の面倒を考えなくて良いので羨ましい
  • A2:自分の会食についても協力的なので問題ない
  • A3:とくに何も思わない
  • A4:自分優先でずるい

 これで結果が、A1:55%、A2:25%、A3:20%、A4:10%だった場合、A1「子供の面倒を考えずに羨ましい」が「だんとつでトップ」と表現されることが多いのです。これは典型的な「ダブりあり」の選択肢です。A2とA3が重なっていることで「問題はないと考えている」が分かれています。この4つの選択肢の選び方から、明らかに「A1」を1位にしようという意図が感じられます。

 実はこれとほぼ同じようなものが存在します。このアンケートが掲載されたメディアはどのようなものか容易に想像がつきますよね? 子育てママ向けメディアの「夫への不満」のコーナーです。「羨ましい55% vs 問題ない45%」ではインパクトに欠けると判断されているのでしょう。よくよく見ると合計が100%ではないので複数回答を許している点にも注意が必要です。

 これは、選挙などで「保守分裂を避けよう」という動きがあるときに理解しやすいのではないでしょうか。「保守A、保守B、革新C」という選択肢ではたとえ「保守」が多くても、分裂することで革新のC候補が1位になる可能性があるのです。

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