世代交代、多様性重視など見える
私はいまだに会社員時代の勤務先の人事を毎年、チェックしている。上場企業は、経営トップ層だけでなく、幹部の人事までHPに掲載されたり、新聞に人事情報が載ったりする。これにより、方向性がわかる。テクノロジー重視、グローバル重視、世代交代、多様性重視などが見えてくる。バランス、配慮を感じることもある。ある年、ベテランのしかも数字にうるさいハードマネジメントをするタイプと、気鋭の若手が同時に取締役となった。経営の意思決定に関わる者の多様性という意味でも、様々な社内の心情に対する配慮という意味でも、バランスを大事にしたものだと感じた。
この件は、取引先の人事に関しても言える。どの方向に向かっているのか。人事を通じて考えよう。
なお、今回の菅内閣においては、女性閣僚が2名で、しかも2人とも経験者だったことが批判された。いかにもこの手のことについて批判しそうな私だが、やや冷静に見ている。まずはスムーズな政権の移行を目指したということを色濃く感じる人事である。新型コロナウイルスショックへの対応が続く中での新政権なので、トラブル回避、実行力、即戦力を意識したとみるべきだろう。一方、デジタル担当など新たなポジションの設置などのチャレンジは見られる。
この女性閣僚については、私は増やすべきだと考えているし、閣僚人事は、極論、民間登用という手もあるわけなので、意志の問題ではある。ただ、そもそもの女性議員比率をあげなくてはならないし、その議員の中でも閣僚候補生を育てなくてはならない。この内閣ではなく、次の内閣で何人女性閣僚が生まれるか、初入閣者は何人いるのか、重要なポジションを任されるかどうかに私は注目している。
これは男女関係なく、次の世代が育っているかという点にこそ注目するべきだろう。次に担うべき人がどれだけいるのか。おじさんだらけ、男だらけという批判もあった菅政権だが、次に控え選手がいるのかどうかも気になる。
もっとも、閣僚人事は女性比率が少ないだけでなく、「若手」比率も少なかった。30代、40代の閣僚は小泉進次郎氏1人だ。これを層が厚いとみるのか、硬直化しているとみるのか。
菅政権をウォッチしつつ、自社の人事のこれからを考えてみよう。菅政権と同じように、男だらけ、おじさんだらけになっていないか。さらには、自分が首相になったら、入閣したら、経営陣になったらということも妄想してみよう。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら