ビジネストラブル撃退道

コロナ禍で転職できず焦り? 本当に今の会社を辞めるべきか問い直せ

中川淳一郎
中川淳一郎

 そろそろ転職するかな…と思っていた人がコロナのせいでできなくなったことも多いだろう。売り上げの減少に伴い各社が採用数を絞っていたり、冒険をするよりも今いるこの環境を維持する方が得策、と考えた場合にそうなるもの。

 だが、ここでは「転職」そのものについて考えてみたい。厳密に当連載の趣旨である「ビジネストラブル」というわけではないものの、転職をするというのは、現在の職場に何らかの不満があるわけで、それはトラブルの一種とも捉えられる。また、今回はキャリアアップをしたいと考えていたのに、その機会が失われたわけで、それはトラブルである。今回はこうした「チャンスを失った…」と嘆く方々を慰めてみる。

 そもそも人はそこまで多く転職はしていない。総務省が発表した「平成29年就業構造基本調査」によると、転職者の割合は全国平均で5.0%。最も高かったのが沖縄県の6.7%で、最も低かったのが和歌山県の3.6%。東京都は5.7%だった。10年単位で計算すれば複数回する人が一人もいなかった場合は50%が転職している計算になる。

 とはいっても、とにかく仕事が長続きせず「転職癖」がついて何度も転職する人もいるため、10年で1回は転職をする人は数割といったところだろう。そうなると転職経験率は5.0%よりも随分と高くなっていくわけだが、私なぞ、頻繁に転職できる人のことを心から「すげー」と思ってしまう。

 何しろ、人間関係を毎度リセットしなくてはならないだけに、それが面倒くさ過ぎる。転職して最初の1カ月は新たな人間関係構築と職場のルールを学ぶことに費やされてしまうのも面倒だと考えてしまう。職場における不満の上位は「年収」「人間関係」「やりがい」に行きつくだろうが、とんでもないパワハラを受けたり超絶ブラック企業でない場合は「まぁ、いいか」と現状を肯定するのも一つの手である。

 転職しない自分は無能?

 現在私は20代後半~30代中盤の人々の転職相談に乗ることが多いが、根本的に会社がイヤでイヤでたまらない人、待遇に不満を抱いている人というのは会ったことない。「そりゃ絶対に辞めなくちゃだめだよ! 今からでもいいから辞表書いちゃえ!」と本当は煽りたいところなのだが、よくよく話を聞いてみると「実はそこまで不満はなかったんです」という話になり、最終的には「まだしばらくはいようかと思います」でシャンシャン、となるのだ。

 転職をしようと考える人は、自分の能力はこんなぬるま湯のような環境では発揮できないと考えたり、ネット記事で華麗なる転職ストーリーを読んだり、知人がSNSで誇らしげに転職したことを書いたりして焦ってしまうから。どこか転職しない自分は無能なのでは…という不安が頭によぎってしまうのである。

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